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こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
ひと頃の暑さから、一気に涼しくなりましたね。
昼間は、まだ気温が高いですが、湿度は低く、朝晩は少し肌寒い日も。
で、9月も残すところあと僅か。
いよいよ10月からは、インボイス制度が始まります!
先日、長年スナックを経営されている方からご相談があり、売上が1千万円もいかないのに、インボイスの登録申請をしてしまった。できれば、取下げをしたいと。
私からは、会社等のお得意様の売上はいくらぐらいになるか聞いてみました。会社関係のお客さんは、接待交際費等で経費とするので、今後、インボイスが必要になりますから。
そのスナックのママさんは、「年間、300万円ぐらいかしら・・。」との回答。
そうであれば、インボイスを登録して消費税を申告するよりも、インボイスを発行するお客さんだけ、値引きをした方が有利ではないかとアドバイスしました。
ということで、今回は、インボイスを登録申請せず、「値引き」により対応する場合についてシミュレーションしてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
もうご存じかと思いますが、経過措置で、インボイスが無くても、導入後3年間は80%、その後の3年間は50%、仕入税額控除ができます。
経過措置で、会社(買い手)が80%までは仕入税額控除が認められるので、残り20%が会社の「損」となります。
そこで、お店(売り手)は、その「損」を値引きとして補填すれば、会社の仕入税額控除+値引き額は、インボイスを受け取った場合の仕入税額控除の金額に近いものとなります。
次の事例で説明してみましょう。
売上(税込み)が11万円の場合
では、2,000円を、そのまま値引きしても良いのでしょうか?
ネットで検索すると、見解が2つに分かれています。
① そのまま値引きの金額とする(2,000円)
⇒ 取引金額 ÷ 1.1 ☓ 10% ☓ 20%
② 2,000円は税抜きなので、税込みの金額とする(2,200円)
⇒ 取引金額 ÷ 1.1 ☓ 10% ☓ 20% ☓ 1.1 = 取引金額 ☓ 20%
①の場合、会社の仕入税額控除+値引額は、
(110,000-2,000) ÷1.1☓10%☓ 80% + 2,000 = 9,854 円
⇒ 本来の仕入税額控除は10,000円ですから、146円、会社が損(お店が得)することになります。
②の場合、会社の仕入税額控除+値引額は、
(110,000-2,200) ÷1.1☓10%☓ 80% + 2,200 = 10,040 円
⇒ 40円、会社が得(お店が損)することとなります。
ということで、会社側を「損」させないためには、②の計算を選択すべきと考えます(お店は若干損することになりますが、値引きの計算が楽だと思います。)。
上記②の計算方法を、図式にしたHPを発見しました!
とても分かりやすいので、紹介しておきます。
https://uchimaki.com/2023/07/04/tourokunasi2nebiki/
上記②の計算例でのお店側の損は40円なんですが、塵も積もれば山となる!?
もっと厳密に計算したい!という方もいるかと思いますので、3次方程式を考えてみました。
いかがでしょうか、まだ誤差はありますが、本来の仕入税額控除の10,000円に近づきました。
ただ、実務的には、②の計算式で良いのかなと思います。
接待等でお店を利用した社員は、通常、会社の経理担当に領収書を添付して精算を行います。
その際、領収書がインボイスに対応していないと、経理担当から「これは経費になりません!」(NHKドラマみたいに)と言われる可能性があります。
そうすると、今後、そのお店を使わなくなることも想定されます。
そのため、お店が領収書を発行する場合、インボイスを発行しない代わりに、会社の消費税負担分を値引したことを明示すれば、お客さん(経理担当)も納得してくれるのではないかと思われます。
今回のシミュレーションでは、取引額を入力すれば、連動して領収書の「但書」に値引額を表示するようにしてみました。
例えば、スナックの利用代金(値引き前)が30,000円、値引額が600円の場合。
冒頭相談に相談に来られたスナックのケースの場合、例えば、
売上が900万円
そのうち、会社のお得意さん(インボイス請求あり)の売上が300万円
のケース
インボイス申請をして消費税課税事業者になった場合と、値引き対応した場合の比較表を作ってみました。(消費税の算出は、簡易課税を適用。値引き額は②の計算で算出)
相談にこられたママさんには、このエクセルで作ったシミュレーションで説明させていただき、登録申請の取下げ書を提出することを決意されました。
この「取下げ書」、書式が決まってないのですね。
WEBに何種類かアップしてますので、それを利用すれば良いと思います。
後日、ママさんからは、「無事、税務署に受理いただけたました。ほんとにありがとうございました」との連絡をいただきました。
このスナックのママさんのように、一旦、登録申請した方で、同様のケースに当てはまる場合は、「取下げ書」の提出を検討されても良いかもしれません。
なお、9月30日までに「取下げ書」を提出しなければ、消費税課税事業者として申告する義務が発生しますのでご注意下さい。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
阪神タイガース、とうとう「アレ」しちゃいましたね!
関西は、「アレ」旋風で、非常に盛り上がっています。
でも、全国的な話題として、他にも「アレ」が2つあると思ってます。
ひとつは、この10月から始まる「インボイス制度」です。
そして、もうひとつは、来年1月から始まる「電子帳簿保存法」。
この2つの「アレ」は、事業者にとっても、税理士にとっても、事務コストが掛かるという点で、相当悩まれているのではないでしょうか。。。
さて、シリーズで掲載してきた「電子帳簿保存法」。
今回は、前回に引き続き、改正電子帳簿保存法の導入により、これからの税務調査がどのように変わっていくかについて、解説したいと思います。
国税庁では、「税務行政の将来像」を令和3年6月に発表しました。
毎年、その内容がリニューアルされ、令和5年6月23日に、最新の内容に更新されています。
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/pdf/syouraizo2023.pdf
表題は「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」となっていて、要は、DXを推進して、税務行政のサービスの向上や業務の効率化を図る内容となっています。
この資料を読むと、オンライン化により、例えば、税務相談のチャット化や年末調整の簡便化、キャッシュレス納付など、納税者利便がこれまで以上に向上する施策が紹介されています。
数ある省庁の中で、ここまで取り組んでいるのは国税庁ぐらいではないでしょうか。素晴らしい!
一方で、業務の効率化については、20ページに「課税・徴収事務の効率化・高度化等
<“データの活用”の徹底>」というのが紹介されています。
この資料の21ページです。
ちょっと文字が小さくて読みにくいかと思いますので、真ん中の図を拡大してみましょう。
「◆BAツール ・ プログラミング言語を用いてデータを分析」と書かれています。
そして、BAツールとは、
BA( Business Analytics )ツール 蓄積された大量データから統計分析・機械学習等の高度な分析手法を用いて、法則性を発見し、将来の予測を行うツール
と解説されています。
一番左の図には、「◆様々なデータを収集し 、 分析用に加工」と書かれています。
そろそろお分かりになった方もいるのではないでしょうか。
そうなんです、前回のブログで解説したとおり、電子帳簿保存法の「ダウンロードの求め」で取得したデータは、
⇒ 申告事績や資料情報などで収集したデータとマッチング
⇒ BAツールを使って分析(異常検知)
⇒ 不正(脱税)の把握
という流れで、今後、調査が行われるようになると思われます。
この資料を読み解くと、今回の電子帳簿保存法の「取引データの保存義務化」は、国税庁のDX戦略に沿って改正されたとも考えられます。
ネット検索すると、様々なBAツールが紹介されています。
で、BAツールの主な機能は、「データマイニング」が挙げられます。
NECのホームペジには、次のように紹介されています。
::::::::::::::::
◆データマイニングの概要
・データマイニングとは、大量のデータに対して統計学やAIなどを駆使した分析を行い、何らかの知見を得るための活動のことです。「マイニング」は日本語で「採掘」と訳されます。大量のデータを鉱山に見立て、鉱山から知識という鉱物を掘り当てるイメージをするとわかりやすいでしょう。
・近年はIoT技術などの発達により、リアルタイムで大量のデータを分析するケースが増加しています。その際、あわせてデータマイニングが行われることも増えているのです。
・データマイニングの目的は、データ同士の関連性や予想される事象の発生確率を見出すことです。特にマーケティングの分野では、過去のデータから市場動向、顧客の嗜好性などを予測する目的でデータマイニングが活用されています。
::::::::::::::::
面白い事例を紹介しますと、
① POSシステムというのがあります。スーパーのレジで導入されてますよね。
消費者が購入した商品のデータを集約して、在庫管理だけでなく売上の動向等を分析できるようになっています。
で、POSシステムで得られたデータをBAツールで分析。その結果、「缶ビールと紙おむつが一緒に買われている」のが判ったそうです。
② 車両事故の損害賠償請求について、損害保険会社では、BAツールを使って、不正請求を把握しているそうです。
今話題になっているビッグモータの事件も、BAツールを使えば、バッチリ解明される!?
ということで、国税庁でも、BAツールを使って調査事務の高度化を図ろうとしているわけです。
以上、国税庁のDX戦略と、電子帳簿保存法の改正の密接な関係について解説してみました。
前回のブログでも書きましたが、「ダウンロードの求め」は、BAツールを利用した調査を前提に規程されたものではないかと。で、電子帳簿保存法が改正された「真の目的」はここにあるのではないかと私は思っています。
まだまだ書き足らないことがありますが、今回は、このあたりで筆を置きたいと思います。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
暑い暑いと思っていたら、いつの間にか9月になりました。
令和5年も3/4を経過。月日が経つのは早いもんですねー(汗)
インボイス制度も、導入まで1か月を切りました。
ご事業をされている方は、インボイスの登録申請はお済でしょうか?
申請から登録まで、書面で最長2か月半、電子申告で1か月程度掛かるようですので、お早めに申請された方が良いと思います。
ただ、令和5年9月30日までに申請すれば(郵送の場合の9月30日の消印があれば)、令和5年10月1日から登録事業者になれます。
登録通知は10月1日以降となりますが、取引先には、通知が来た段階で事後的に連絡すれば大丈夫となっています。
さて、電子帳簿保存法ですが、前回のブログで「ダウンロードの求め」について解説しました。
電子取引データの保存については、猶予措置で「相当の理由」があれば「検索要件」が不要になりましたが、その代わりに、税務署員から「ダウンロードの求め」に応じなければいけません。
今回は、税務署員が、電子データをどのようにダウンロードするのか、またダウンロードしたデータをどのように活用するのかについて、解説したいと思います。
なお、私は、元国税職員なので、退職しても「守秘義務」が課せられているため、あくまで一般論として、現在ある各種ICTツールなどの技術的見地から、今後想定される調査方法を述べることとします。
ネット検索すると、パソコンのHDD内のデータをごっそり複写(クローン複写)するツールが紹介されています。
https://www.pro.logitec.co.jp/about_hdd/hddssd/20201016/
また、警察では、事件解決のため、「デジタルフォレンジック」ツールを使って、消去されたデータの復元や解析を行っています。パソコンだけでなくスマホなどあらゆる電子機器に対応してます。
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/what-we-do/digitalforensics.html
クローンツールは、相当以前から存在していました。
また、デジタルフォレンジックツールについては、警察で使っているということは、税務署でも使っているというのは、容易に想像できます。
ということで、「ダウンロードの求め」に応じれば、調査担当者は、
・ パソコン内のデータをごっそり複写
・ 消去したデータを復元
・ パソコンだけでなく、スマホのデータも分析
・ クラウドを利用している場合は、そこに保存しているデータも分析
といったことが、今後の調査において当たり前のように!?行われる可能性があると思われます。
今後の調査においては、取引先の電子データや会計ソフトのデータをダウンロードされる(=複写されて税務署に持ち帰られる)と想定しましょう。
取引先との決済等の情報は、会計ソフトの仕訳データに反映されています。
会計ソフトの多くは、エクスポート機能があり、CSV形式で保存することができます。
CSV形式であれば、他のソフトにインポートすることができますよね!
なので、ダウンロードした会計データを、エクセルにインポートすることもできます。
インポートすれば、エクセルの機能(検索、ソート、ピポッドテーブル等)を使って、取引(決済、仕訳)の分析が可能となるわけです。
「紙」の帳簿の場合は、エクセルに打ち込んだり付箋を付けたりして分析するしかありません。それも相当事務量が掛かることでしょう。
それが、「ダウンロードの求め」でデータを持ち帰ることができれば、パソコンを使って、縦横斜めから!?分析ができ、調査の効率化が図られることになると思われます。
売上を誤魔化していた納税者に、税務署から調査の事前通知が来たとしましょう。
その納税者は、調査が始まるまでに、誤魔化していたデータは消去しておけば大丈夫と考えていました。
ところが・・・。
昔であれば、それで誤魔化せたかも知れませんが、現在では、上述したツールを使えば消去されたデータが復元可能です。
具体的には、納税者のパソコンのHDDをクーロン複写した後、フォレンジックツールを利用して消去されたデータを復元するわけです。
ただ、一般的な調査では、税務署はそこまでしないでしょうね。
仮装隠蔽が想定される悪質な納税者に対する調査(特別調査や査察調査)では、これらのツールを活用した調査が行われるものと思われます。
記事が長くなってしまいましたので、今回はここまで。
お読みいただいた感想は、いかがでしたでしょうか?
「ダウンロードの求め」に応じれば、上記のような調査が行われる可能性があるわけで、電子帳簿保存法が改正された「真の目的」はここにあるのではないかと私は思っています。
「怖い」と感じられた方もいるのではないでしょうか?
次回は、国税庁が公表している「税務行政の将来像」を参考に、AI(BAツール)を活用した調査手法について解説したいと思います。
乞うご期待!
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
暑中お見舞い申し上げます。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
先日、大阪の枚方では、最高気温39.8度を記録し、日本一暑い街との報道がありました。
ずーっと良い天気が続いていて、ホント「危険な暑さ」だと思います。
この暑さで、だんだんマスクする人も減ってきたようですが、今、コロナも流行っていいて、今年の夏は、熱中症とコロナの両方に注意しなければならず、どうかご自愛いただきますようご注意されてください。
さて、前回のブログでは、電子帳簿等保存法の猶予措置の適用要件である「相当な理由」について解説いたしました。
この猶予措置は、「検索要件」が免除されるだけで、電子取引データの保存義務が免除されるわけではありません。
そして、税務署員から「ダウンロードの求め」があった場合は、保存していた電子取引データを提出する必要があります。
というわけで、今回は、「ダウンロードの求め」の具体的な意義(内容)について解説したいと思います。
前回のブログで「相当な理由」を解説しましたが、先に、令和5年度税制改正で規定された「猶予措置」の内容を説明しておくべきだったかと・・。
ということで、「猶予措置」の概要は、以下のとおりです。
令和6年1月1日以降も、以下の全ての条件を満たす場合は、電子取引の電子保存義務化が猶予される。⇒ 全事業者が対象
・ 保存要件に従って保存することができない相当の理由がある場合
・ 所轄税務署長が相当の理由があると認めた場合
・ 税務調査の際に、ダウンロードの求めに応じられる場合
・ 税務調査の際に、出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力)の提示・提出の求めに応じられる場合
はい、ここで、ダウンロードの求めが出てきます。
その求めに応じるためには、電子取引データを保存しておく必要があり、現行のように出力書面の提示だけでは許してもらえなくなる、ということなんです。
ちなみに、商工会議所のリーフレットには、データを渡せる状態にしておけば「従前の保存方法のままで良い」と掲載されてますが、そんなに簡単な話ではないと思います。
取扱通達4-14では、次のように記載されています。
(電磁的記録の提示又は提出の要求に応じる場合の意義)=抜粋=
税務職員から提示又は提出の要求(以下「ダウンロードの求め」)があった場合に、そのダウンロードの求めに応じられる状態で電磁的記録の保存等を行い、かつ、実際にそのダウンロードの求めがあった場合には、その求めに応じることをいうのであり、「その要求に応じること」とは、当該職員の求めの全てに応じた場合をいうのであって、その求めに一部でも応じない場合はこれらの規定の適用(電子帳簿等保存制度の適用・検索機能の確保の要件の緩和)は受けられないことに留意する。
また、国税庁HPに掲載されている「取扱通達解説(趣旨説明)」に、更に具体的な内容が記載されています。
長文なので、要約すると、以下のようになります。
・ ①税務職員からのダウンロードの求めに応じられる状態で電子データの保存を行い、②実際にダウンロードの求めがあった場合には、その求めに応じる必要がある。
・ 職員が求めた全ての電子データの提出に応じる必要があり、そのデータにおいて常時出力可能な範囲で、求めに応じた方法(例えば出力形式の指定)で提出する必要がある。
※ 「求めに応じた方法」が満たされていないケースとしては、
〉求められた帳簿データの一部について、電子データの提出に応じない
〉CSV形式で出力可能にもかかわらず、検索性に劣る他の形式で提出
といったことが考えられています。
この「ダウンロードの求め」、取扱通達を読んでみると、非常に厳しい規定だと思いませんか⁉
さらに類推すると、
・ 「全ての電子データ」の提出に応じる必要があるため、メールやメモ等のデータも対象となる!
・ 適正に電子データを保存していない場合は、青色申告の承認を取り消される場合も有り得る!
と考えられます。
いかがでしょう。猶予措置が出来たから「ひと安心」、「先送りできる」というわけではないですよね・・。
今回は、前回の「相当な理由」に続き、「ダウンロードの求め」を深堀りしてみました。
電子帳簿やスキャナ保存は、あくまで「任意」の規定ですが、電子取引データの保存は「義務」。
そして、その保存したデータについては、猶予措置で「検索要件」は不要になったとしても、税務署員に全てを見せなければならない。
これまでは、パソコンの中身を見せてくださいといった調査は、ごく稀だった思いますが、これからは、データダウンロードされる調査が当たり前になるかも知れません!
ということで、次回のブログでは、では、税務署員は、どのようにしてデータをダウンロードするのか。そして、そのデータをどのように活用しようとしているのか、ご紹介したいと思います。
乞うご期待!
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
昨日までカンカン照りで、いよいよ梅雨明けかと思いきや、今日大阪は、昼から雨模様と。
毎日、蒸し暑い日々が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、納税協会で「電子帳簿等保存法」のセミナー講師をやっていますが、猶予措置として「相当の理由」があれば、電子取引データの保存義務における「検索要件」が免除されるというのは、ご存じでしょうか。
で、今回、「相当な理由」って、具体的にどういうケースなのか、解説したいと思います。
国税庁では、毎年の税制改正で目まぐるしく変わる!?電子帳簿等保存制度の特設サイトが開設されています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
電子取引、電子帳簿・電子書類、スキャナ保存の項目ごとに、制度の解説が行われています。
ただ、この特設ページ、「新着情報」というのが無いんです。
新たな情報が付加されたら、それを新着情報として掲載するのが通常なんですが、それが無い・・。
インボイス制度についても特設ページが開設されていますが、こちらは新着情報がありますが、電子帳簿等保存法については、それが無いって、不親切だと思いませんか⁉
注目していたのは、Q&Aの掲載です。
令和5年度税制改正で、新たな猶予措置が定められ、特に「相当な理由」があれば、検索要件が免除されるわけですが、その「相当な理由」って、具体的には、どういった場合なのか知りたかったわけです。
ありました、ありました。国会で、国民民主党の大塚議員が質問されていました。
質疑の模様はこちらです。
↓
令和5 年3 月16 日財務金融委員会(国民民主党 大塚耕平議員の質疑)
大塚議員:「相当の理由」というのは、例えばどういうことか。
主税局長:「相当の理由」があると認められる場合については、適用要件をことさらに限定する趣旨ではなく、システム対応が整わない場合などを中心に中小企業を含む事業者の実情に応じて柔軟に猶予措置を適用することを想定して規定を明確化したもの。
本年末までの経過措置として講じられている宥恕措置では、例えば、そのシステム対応が間に合わなかった事業者等に対して「やむを得ない事情」があるということで宥恕措置を講じているが、この場合、最終的にはシステム整備する意向がある旨を口頭で回答してもらうといったようなことになっている。
今般の新たな猶予措置は、例えば金銭的な理由などによりシステム対応が今後ともできないといったような理由も該当するということで、柔軟にこの猶予措置を適用することが可能になるよう、こういった規定にしている。
ふむふむ、「金銭的な理由」も相当の理由に当たるわけか・・。
でも、例示ではなく、ちゃんと国税庁で公表して欲しい!
上記の「特設サイト」の「電子取引」のバナーをクリックすると、下の方に「よくある質問」という項目があります。
そこに「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」が掲載されていました。
その一問一答の「問61」に、「相当の理由」の解説がありました!
↓
令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要となります。
ふむふむ、、、
ちょっと待てよ、「システム等や社内のワークフローの整備が間に合わない」って書いてますが、国会質疑にあった「金銭的な理由」は書いていない・・。
「整備が間に合わない」っていうのが、それに該当するのかな。
あまりにも不親切な表現だと思いませんか⁉
もっと具体的に書いて欲しいです・・・。
「特設サイト」には、他にもメニューが用意されていて、「項目別に調べる」という項目に「取扱通達」というのがあります。
↓
そこをクリックすると、ようやく、改正された取扱通達のリンクが出現します!
↓
あぁぁ、やっと見つけました!
まず、取扱通達ですが、
(猶予措置における「相当の理由」の意義)
7-12 規則第4条第3項((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する猶
予措置等))に規定する「相当の理由」とは、事業者の実情に応じて判断するもので
あるが、例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等が
これに該当する。
おい、一問一答と同じ内容やないかい!!
次に、その趣旨説明
【解 説】
規則第4条第3項に規定する「相当の理由」は、当該規定が電子取引の取引情報に係
る電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意して設けられたもので
あることを鑑みて、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存
要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない
等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁
的記録の保存を行うことが困難な事情がある場合を対象とするものであり、資金的な事
情を含めた事業者の経営判断についても考慮がなされることとなる。
ただし、システム等や社内でのワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情
報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できる場合や資金繰りや人手不足等のよ
うな理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく理由である場合等、何ら理由なく保
存要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用はないこと
に留意する。
ようやく国会の質疑にあった「金銭的な理由」=「資金的な事情」が出てきました。ふぅ~。
さらに、「ただし」書きには、「人手不足」という文言も発見!
以上、「相当の理由」には、
・ 金銭的な理由
・ 人手不足
も認められる、というのが結論です!!疲れました(+_+)
今、世の中は労働者不足、それもバックオフィスである経理部署は人員削減されている会社が多いです。
その意味では、金銭的な理由よりも、人手不足の方が「相当の理由」に該当するケースが多いのではないかと思います。
今回は「相当の理由」を深堀りしてみました。
しかし、納税者の方は、基本的に「一問一答」を見ると思うんです。そこには、取扱通達と同じ内容しか掲載されていないというのは、不親切だと思いませんか?
やはり「趣旨説明」の内容まで取り込んだ「一問一答」にすべきだと思います。
現在、セミナーの講師をやっていますが、参加された方は、インボイス制度よりも電子帳簿等保存制度で悩まれている方の方が多いように思います。
もっと、国税庁は、インボイスだけでなく電子帳簿等保存法についても、丁寧かつ親切に説明・PRすべきではないでしょうか?
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
サッカーW杯、日本がドイツに続き、スペインに勝利!!
やはり、諦めたらアカン!ということですね。私も頑張ろうという気持ちになりました。
さて、前回のブログで、「請求書の電子データ保存義務 引き続き紙も認める方向」のニュースがあり、「電子データの保存義務は事実上廃止!?」との記事を書きました。
その後、新たに情報を入手しましたので、更新情報としてアップさせていただきます(汗)
前回、NHKニュースの記事を紹介しました。
もう一度、見てみましょう。
「請求書の電子データ保存義務 引き続き紙も認める方向で調整」
2022年11月24日 7時32分 NHK
事業者が取引先とメールでやりとりしている請求書などを、電子データで保存することが、ことしから義務づけられましたが、政府・与党は対応が遅れている中小企業などに配慮して、来年末で猶予期間が終わったあとも引き続き紙による保存を認める方向で調整しています。
政府は、企業の会計や納税業務の電子化を進めるため、ことし1月から事業者が取引先とメールでやり取りしている請求書や領収書を、電子データで保存するよう義務づけました。
保存にあたっては、データの改ざん防止対策をとることや、日付や金額、取引先ごとに検索できる機能を備えることを求めたうえで、来年いっぱいは紙での保存を認める猶予期間を設けています。
ただ、電子化に必要な人材の不足などで中小の事業者を中心に対応が遅れていることから、政府・与党は来年末の猶予期間の終了後も、紙での保存を引き続き、認める方向で調整しています。
紙とは別にメールでやり取りしている電子データについても保存するよう求めますが、保存にあたって検索できる機能を備えなくてもよいとして企業側の負担を軽減することにしています。
このニュースでは「紙」の保存を認めると書いてあるので、電子データを保存しなくてもよい=「事実上の廃止」と理解してしまいました。
でもしか、ニュースの内容のうち、赤字で記載された部分を読んでみると、一部、矛盾することがわかりました。どっちなんだと・・。
・紙での保存を引き続き、認める
⇒ 「電子データ」の代わりに「紙」での保存でも良い。と読めます。
・保存するよう求めます
⇒ あれ、保存する必要あり!?。だんだんわからなくなってきた・・。
・検索できる機能を備えなくてもよい
⇒ メールのみ、検索機能を備えるけなくて良い。と読めます。
昨日入手した情報を、以下に記載します。
・ 電子データは、保存する必要あり
⇒ 電子データで受け取ったものは、原則、「紙」での保存は認めない。
・ メールについても、保存する必要あり
⇒ 上記と同様、メール(添付ファイルを含む。)を出力した「紙」での保存は、原則認めない。
・ 電子データの検索機能を備付けない場合は、「紙」も保存
⇒ 「電子データ」を検索できないのなら、「紙」も保存しておけ!
以上、結局、電子データを出力した「紙」だけの保存はダメということです。トホホ・・・。
なんか、電子帳簿保存法も、グダグダになってきましたね・・。
皆さんは、どちらを選びますか? データ保存+検索機能 or データ保存+紙
いずれにしても、面倒になること必至!
なんら軽減措置になっていないと思います。事業者にとって、何のメリットもありません。
政府が、ICT化を進めたいのであれば、現状のままで、「検索機能」を無料で提供すれば良いと思います。
ということで、私が開発した「ファイル一覧表作成システム」も、今後活用できるということで、徒労に終わらなくて良かった(笑)
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
サッカーW杯、日本がドイツに勝利!
昨日は試合を見るため遅くまで起きていましたので、ちょっと寝不足気味です。
さて、税務に関する情報を毎日チェックしておりますが、一番早く情報をGETできるのが、Twitterだと思ってます。
で、今朝、Twitterで情報検索していると、なっ、なんと!
請求書の電子データ保存義務 引き続き紙も認める方向で調整
というネット記事を発見!!
一気に、目が覚めました(笑)
今朝のNHKニュースでやっていたみたいです。
電子帳簿等保存法については、元々、令和4年1月から施行されるはずでしたが、令和4年度税制改正で、「2年間宥恕する」こととなり、令和6年1月の施行となりました。
この「電子取引データ」の保存義務については、個人・法人に関わらず、これまで、PDF等による請求書等は「紙」に出力したものを保存しても良かったのですが、改正後は、「電子データ」のまま保存、「紙」の保存は禁止という改正が予定されていました。
ところが・・・。
今日のニュースでは、「紙」の保存でも良いと。
ということは、この改正は、
事実上、廃止!
になるわけです。
はぁ?、今まで何だったんだ!?
ネット記事を以下に貼り付けておきます。
「請求書の電子データ保存義務 引き続き紙も認める方向で調整」
2022年11月24日 7時32分 NHK
事業者が取引先とメールでやりとりしている請求書などを、電子データで保存することが、ことしから義務づけられましたが、政府・与党は対応が遅れている中小企業などに配慮して、来年末で猶予期間が終わったあとも引き続き紙による保存を認める方向で調整しています。
政府は、企業の会計や納税業務の電子化を進めるため、ことし1月から事業者が取引先とメールでやり取りしている請求書や領収書を、電子データで保存するよう義務づけました。
保存にあたっては、データの改ざん防止対策をとることや、日付や金額、取引先ごとに検索できる機能を備えることを求めたうえで、来年いっぱいは紙での保存を認める猶予期間を設けています。
ただ、電子化に必要な人材の不足などで中小の事業者を中心に対応が遅れていることから、政府・与党は来年末の猶予期間の終了後も、紙での保存を引き続き、認める方向で調整しています。
紙とは別にメールでやり取りしている電子データについても保存するよう求めますが、保存にあたって検索できる機能を備えなくてもよいとして企業側の負担を軽減することにしています。
政府・与党は年末の税制改正の取りまとめに向けた議論の中で、この案について検討を進める方針です。
そもそも、今回の改正ですが、事業規模に関わらず、個人も法人も、電子データの保存義務を課すこと自体、無理があると思っていました。
確かに、日本のICT化は他国に比べて遅れている、電子(デジタル)インボイスの導入といった背景があるのは理解できますが、やはり時期尚早だと。。。
いずれにしても、現在、年末に発表される令和5年度税制改正大綱に向け、税調で議論されていますが、インボイス制度も見直し(免税事業者の激変緩和措置)がなど、今になって、更なる見直しが行われるって、法律を作るときにキチンと議論されていなかったということではないでしょうか・・。
納税者や税理士を困惑させないよう、政府は、責任を持って法律を作って欲しいと思います!
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
前回のブログでもお話しましたが、現在、納税協会等で開催するセミナーで講師をやらせていただいてます。
特に、電子帳簿等保存法については、法律よりも、実際どのように対応すれば良いのか戸惑っている納税者の方が多いように思われます。
令和6年1月から適用される「改正電子帳簿等保存法」では、電子取引データについては、「紙」ではなく電子データのまま保存する義務が発生します。
また、税務当局の「ダウンロードの求め」に応じる必要もあることから、保存した電子データを検索できるようにしておく必要も生じます。
検索要件としては、取引年月日、取引金額、取引先がわかるようにしておく必要があり、国税庁では、「ファイル一覧表」の作成、又はファイル名を変更(取引金額等を記載)する方法を推奨しています。
このため、セミナーでは、フリーソフトを活用した「ファイル一覧表」の作成方法などを紹介させていただいてきましたが、いかんせんフリーソフトなので、使い勝手が悪い・・・。
そこで、私の全知全能を投入し⁉、エクセルによる「ファイル一覧表」作成システムを開発いたしましたので、ご紹介したいと思います!
FLMS「ファイル一覧表作成システム」.xlms を起動した画面は、次のとおりです。
(FLMS = File List Makinng System の略です。)
この画面上部にある「ファイル検索」ボタンを押下すると、ポップアップ画面が表示されますので、ファイル一覧表を作成したいフォルダを選択します。
フォルダを選択すると、瞬時に、フォルダ内にあるファイルの、ファイル名、ファイル年月日、保存先を取得した一覧表が、新規ファイルとして作成されます。
いかがでしょう⁉
「ファイル名」は保存先とリンクさせているので、クリックするとファイルの内容が表示されるようにしています!
なお、「ファイル年月日」は、ファイルのプロパティの「更新日時」から取得しています。
【追記(バージョンアップ)】
「保存先」欄にもリンクを貼るようにしました!
各ファイルの保存先をクリックすると、そのフォルダ内にある全てのファイルが表示されるようになりました。
各ファイル名をクリックして、ファイルの内容を確認しながら、取引年月日、取引金額、取引先を入力します。
取引年月日は、「ファイル年月日」と同じであれば、セルをコピーすれば良いですし、取引先ごとにフォルダを作成しているのであれば、「取引先」の入力は省略しても良いかと思います。
入力が終われば、任意のファイル名で保存します。
※保存したファイルは、別のフォルダ等に移動しないでください。保存場所を変更するとリンクが切れ、一覧表に登録されたファイルの内容が表示されなくなります。
会社によっては、取引先や取引区分ごとにフォルダを作成するケースも想定されます。
その際、フォルダごとに一覧表を作成しておき、そのファイルを合算(コピペ)した「総括表」を作成しておくと良いでしょう。
それを作っておけば、複数のフォルダに保管している電子取引データを速やかに検索できるメリットがあると思います。
※ サーバーやクラウドをご利用の方は、電子取引ファイルを一定の場所(フォルダ)に集約した上で「総括表」を作成しておけば、社員間で情報共有が可能となります。
以上、私が開発したシステムの紹介でした。
私自身、DX-税理士を目指しているので、これぐらいは、作れなくてはいけませんよね(笑)
※現在、私が講師をしているセミナーで、このシステムを無料配付しています。もし、機会があれば、セミナーにご参加いただければ幸いです。
※利用にあたっての留意点
・ ダウンロードしたファイルについては、Windows上でセキュリティ(ブロック)を解除する必要があります。
・ ファイルを右クリックしてメニューを表示し、「プロパティ」をクリックして下さい。
・ プロパティが表示されるので、最下段に表示される「セキュリティ」の右側にある「□ 許可する」にチェックを入れ、OKボタンを押します。
・ 以上で、ご自身のパソコンで、システムを利用できるようになります。