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おはようございます。
4月に入り、現在、桜が満開です!
ブログの更新、年明けから確定申告業務等で忙しく、ひと月に1回程度となってましたが、少し落ち着いてきましたので、ひと月に2回は更新したいと思ってます。(汗)
現在、納税協会のセミナー講師で「消費税インボイス制度(実務編)」を開催してまして、その作成した資料から、インボイス制度の特例等を紹介したいと思います。
今回は、タクシーを利用した場合のインボイスの受領です。
個人タクシーの場合、インボイスの登録事業者となっていなければ、インボイスを受領できないこととなります。
それを回避する方法がないか調べてみました。
今の時代、便利になりましたね。
タクシー乗り場が無い、流しのタクシーがなかなか捕まらない、といった経験をされた方も多いと思いますが、スマホでタクシーを呼べるようになりました。
テレビCMで「GOする!?」と頻繁に宣伝されている「GO」アプリを使えば、スマホの位置情報から、簡単にタクシーを呼べます。
ご利用になられた方も多いのではないでしょうか?
「GO」に登録しているタクシー事業者も増えていて、その中には、個人タクシーも含まれます。
で、会社の用務で「GO」アプリで呼び出したタクシーが、たまたま個人タクシーで、インボイスの登録事業者でなかった場合、インボイスが受領できないと諦めなければいけないのでしょうか。
「GO」のホームページを見てみると、
との記事を発見しました。
ふむふむ、電子マネーPayPayと同じような「GOPay」というのがあるわけですね。
そして「媒介者交付特例」を適用し・・・、と書いてあります。
国税庁の資料を見てみると、「インボイスの特殊な交付方法」として、「直接交付」「代理交付」「媒介者交付特例」の3パターンが紹介されています。
媒介者交付特例とは、
次の①及び②の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、委託者の課税資産の譲渡等について、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書を、委託者に代わって、購入者に交付し、又は提供することができます(以下「媒介者交付特例」といいます。)
① 委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること
② 委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること
上記①の条件を当て嵌めると、GO会社、契約しているタクシー事業者、両方がインボイス登録事業者である必要があるようです。
ということは、やはり、登録事業者で無い個人タクシーでは、インボイスは貰えないことになる??
「GO」ホームページには、インボイス発行に関するQ&Aが掲載されています。
そこを見ると、
Q:登録事業者ではないタクシーに乗車した場合、インボイスは発行されますか?
A:登録事業者でないタクシーに乗車した場合、配車方法および決済方法に応じてインボイスの発行可否が決まります。
① GOアプリから配車し、GO Payで決済した場合
・・GOアプリから電子領収書(インボイス)が発行できます。
② GOアプリから配車し、車内決済した場合 ③タクシー乗り場・流し等で乗車した場合
・・インボイスは発行できません。タクシー車内で領収書(非インボイス)が発行されますので、降車時にお受け取りください。
ををを、①の場合、登録事業者でないタクシーでも、インボイスを発行してもらえることになるようです!
要は、電子決済を行う「GO」会社が、インボイスを発行することとなるから、ということでしょうか。
そして、契約した個人タクシー(登録事業者でない)に係る消費税については、GO会社が負担するということ!?
そういえば、UberEatsでも、当面の間、配達員が登録事業者で無くても、インボイスを発行すると発表されていましたね。
上記取扱いについてですが、あくまで「GO」アプリを使って配車⇒GOPayで決済した場合のみ、インボイスが発行されるということですね。
会社が法人クレジットを契約していて、従業員が、そのクレジットでGOPay決済した場合というのが当てはまりますがが、そのような利用って実際にあるのでしょうか?
(個人事業者の場合は、当てはまる場合があるかも。)
ただ、会社の経理としては、クレジット明細で集約できるので、会計業務の効率化が見込めるかもしれません。
一方、国税庁Q&Aでは、「出張旅費特例」が公表されています。
この特例を使えば、「帳簿のみの保存」でOKとなるので、インボイスの受領を気にする必要はないことに・・。
今回は、タクシー利用時のインボイスの受領の可否について「探求」してみましたが、結局は、会社の用務としてタクシーを利用した場合は、「出張旅費特例」を使えば良いということで、
・ GOアプリ&GOPayを使う
・ 個人タクシーでインボイスを貰えないから使わない
といったことにはならないようですね。
でもでも、意外と、会社では「タクシー使えばインボイスもらってください!」と五月蠅く言う経理部署もあるのではないでしょうか?
参考にしていただければ幸いですm(__)m
おはようございます。
もう3月の下旬。
激務の!?確定申告で、長らくブログを更新してなく、すみませんでした。
やはり、2月・3月は、クライアントの都合もあり、申告を完了するまでバタバタいたします。
さて、ようやく落ち着いてきましたので、久しぶりのブログ更新!
また、納税協会でのセミナー講師も再開ということで、いそいそとセミナー資料を作成しております。
今回のセミナーは、「消費税インボイス制度(実務編)」
インボイス制度導入後、6か月が経とうとしておりますが、企業等から様々な質問があり、それを受け、国税庁のQ&Aが順次更新されていて、それをベースとした内容でセミナーを開催することとしています。
これまでもインボイス制度のセミナーを開催し、受講者の方からご質問を受けることがあり、今回のセミナーでは、その内容も盛り込むこととしました。
その内容とは、「海外宿泊予約サイトを使った場合、インボイスは発行されないの?」との質問です。
海外宿泊予約サイトって、結構いろいろあるのですね。
Booking.com(ブッキングドットコム)、Agoda(アゴダ)
Expedia(エクスペディア)、Trip.com(トリップドットコム ※旧 Ctrip)
で、Agoda(アゴダ)の予約サイトを見てみると・・・。
なるほどなるほど、「インボイス提供という現地の要件に従うのは、貴施設の責任となります」と書いてあり、Agodaでは、インボイスを発行せず、利用した施設(ホテル等)で発行してもらえ!ということか・・・。
確かに、海外事業者の場合は、日本のインボイス制度の適用から除外されるますので。。。
次に、あるホテルのWEBサイトを見てみました。
すると・・・、
【重要】インボイス制度に関わる海外サイトの領収書の対応について
平素より○○ホテルに格別のご愛顧を賜り厚くお礼申しあげます。
2023年10月からのインボイス制度開始について皆様にご案内申し上げます。
現在、海外サイト(ブッキングドットコム、agoda、エクスペディア等)が日本国内の請求書・領収書(インボイス)に非対応であることを確認しております。
事前決済にて旅行代理店や宿泊予約サイト等でご予約された場合、当該代理店等が領収書を発行するため、ホテルより請求書・領収書(インボイス)を発行することは原則できかねます。
また事前決済で予約された場合、領収書は当ホテルでは発行出来ませんのでご注意ください。
旅行会社(楽天トラベル、じゃらん、JTBなど)を通してご利用される際、事前決済の場合は当ホテルでは領収書が発行出来ません。
出張利用等で領収書が必要なお客様は、当ホテルホームページよりご予約頂くか、現地決済の場合に当ホテルが請求書・領収書(インボイス)を発行いたします。
何卒ご理解を賜りますようお願い申しあげます。
あらら、ホテル側でも、インボイスを発行しないと!
発行してもらいたいのなら、国内の宿泊予約サイトか、ホテルのHPから直接予約せよ!と。。。
海外宿泊予約サイトを利用したら、仕入税額控除を諦めないといけないのか・・。
いえ、対応策がありました!
それは、「出張旅費特例」を適用すれば良いとのことです。
「出張旅費特例」とは、出張者が旅費を立て替えた場合は、インボイスが不要、帳簿のみの保存で、仕入税額控除ができるという制度です。
したがって、もし、海外宿泊予約サイトを利用するときは、会社ではなく出張者が予約し、精算時に、出張者は、予約完了のメール等を会社に提供。会社は、それに基づき記帳すれば良いということになります。
最後に、出張旅費特例の概要を解説しておきます。
・ 出張旅費等特例は、企業が従業員に支給する出張旅費、宿泊費、日当などの経費について、その旅行に通常必要と認められる範囲の金額であれば、インボイス(領収書や請求書などの証拠書類)の保存なしに仕入税額控除を受けられる。
・ この特例は、社内規程や基準の有無、概算払いか実費精算かといった経費の支給形式に関わらず適用される。つまり、企業が設定する基準に基づいて支給された旅費であれば、形式を問わず特例の対象となる。
いかがでしたしょうか、上記のような方法で対応が可能だと。
インボイス制度導入後、企業等から、いろんな面で質問が発生しているようで、国税庁も、Q&Aを随時更新しています。
当ブログも、皆様の役に立つ情報を発信していきたいと考えていますので、今後も、よろしくお願いいたします。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
令和5年(2023年)も、残り僅かとなりました。
この1年、いかがでしたでしょうか?
1年を振り返ってみますと、インボイス制度の導入、38年ぶりの阪神日本一など、印象的な1年だったような。
そういえば、今年の漢字は「税」でしたね。
私自身、今年は、税理士業務だけでなく、自身を磨くために次の機関に応募し、採用されました。
・ 近畿税理士会「近畿税務研究センター」研究員
・ 日本税理士連会「デジタル相談室」相談員
・ 近畿税理士会「業務デジタル化相談室」相談員
「近畿税務研究センター」では、消費税チームに属し、分担して論文を書かねばならず、私の分担は「デジタルインボイス」(汗)
現在、資料集めをしているところなんですが、まずは、「消費税って、どのように導入されたのか?」という点を押さえておく必要があると思い、ネットで関係資料を検索!
沢山の論文が見つかりましたが、その中で一番興味を引いたのは、
財務省に設置されている「財務総合政策研究所」
のホームページでした。
そのHPには、膨大な財務省や税制改正の歴史が掲載されていて、消費税の導入に関して非常に参考になる情報がありましたので、今年最後のブログとして紹介したいと思います。
もし、お時間ありましたらお正月にでも、資料をお読みいただければ幸いです。
いろんなキーワードでWEB検索して、引っかかったのが財務総合研究所の「財政史」でした。
財務総合研究所のHPから、この「財政史」は見つけにくいです。
階層は、
トップページ > 刊行物 > 財政史等 > 財政史
https://www.mof.go.jp/pri/publication/policy_history/index.htm#07
ここには、明治から平成12年までの財政や税制の歴史が克明に記載された資料がアップされています。
例えば、
『平成財政史-平成元~12年度』は全12巻で、そのページを開いてみると、次のようになっています。
その中に「租税」の項目がありますので、それを開く(ダウンロードする)ことができ、大平内閣の「一般消費税」、中曽根内閣の「売上税」、そして竹下内閣「消費税」の導入までの経緯が克明にー少しドキュメンタリー風にー記載されています。
資料をダウンロードして、画面上で、ザーっと読んでみました。
国内に「新しい税」を導入するのは、並大抵の努力では実現しなかったのだなぁ~というのが私の感想です。
消費税導入反対の運動に伴う、業界団体への根回し、市民との対話集会の開催などなど、当時の政治家、財務省、国税庁は、相当苦労したのが分かります。
その中で、とても印象的だったのは、当時の主税局長である尾崎護氏の「回顧録」です。こういうエピソードが「財政史」に掲載されているのが素晴らしいと思いました。
では、以下、その発言を紹介させていただきます。
「ほんとうに頭の中は消費税の実施でいっぱいでした。というのは、世の中は、きっと 4 月 1 日に大混乱が起こるだろう。ということを予測していたわけですね。おそらくスーパーのレジの前では大行列ができるであろう。あるいは百円玉 1 つ持って、鉛筆 1 本を買いに行った子供たちが103円だと言われて買えないで泣いて帰って来るだろうというようなことが、ほんとうにまことしやかに書かれたり言われたりしてたんですね。今から考えるとほんとうに噴飯物なんですけれども、そういうことにいちいち答えていかなければならないということが、我々の非常に辛かったところなのです」
「翌日、夜が明けてから、今度は横山町やら浅草やらに行ってみました。いろいろなところをのぞきまして、浅草で傘を 1 本買いましたら、その正札のとおりの値段なんですね。 3 %を取らないんです。それで「 3 %、いいの? 」と聞いたんです。そうしたら、その傘屋のおばさんが「これはまだ消費税がつく前に仕入れた分ですからいいです」と言ったんですね。ほんとうに日本の事業者のレベルというのは高いなと。そんなに慌てふためいてもいないなという印象をますます強く持ちました。」
「あんなに心配だったことはほんとうにないですね。
それで、薄井君〔薄井信明、当時主税局審議官〕と一緒に六本木のコンビニでしたかね。今で言えばコンビニですね。そこに行きまして、11時50分ごろに行きまして、店の中をぶらぶらして時間をつぶして見ている。そうしたら、午前0 時直前になったら、レジのふたをあけて、何かちょこちょことやったんですよね。また、ぽんと閉めて、 0 時を過ぎた途端に、私が、あれは歯ブラシだったと思いますけれども、 1 本持って買いにいったんですね。そうしたら、領収書にもうちゃんと 3 %ついているんですよ。「早わざだね」とレジの男性に言いましたら、彼が「いや、こんな小さなレジスターでも、いろいろな機能がついていて、こんなのは何でもないんですよ」と言って、さっきソフトを入れかえただけですと言うんですね。今までのあの騒ぎは一体何だったんだという感
じでしたが、それと同時に、ほんとうにほっとしたのを覚えています。」
尾崎護氏は、昭和63年から3年間主税局長を務められ、令和3年:国税庁長官、平成4年:大蔵事務次官まで上り詰められた、正しく「消費税の生みの親」だと思います!
私は国税OBなので、尾崎さんのご発言に「うんうん」と、凄く感動してしまいました。
平成元年4月に導入された消費税も35年が経過。
今や、軽減税率やインボイス制度まで導入され、導入時に議論されていた欧州型消費税(VAT)に近い形にまで成長したと思います。
今年は、これでブログは終了いたしますが、これまでお読みいただいた皆様に感謝いたしますとともに、良いお年をお迎えいただきますことをお祈り申し上げます。
では、来年もよろしくお願いいたします。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
気候の挨拶抜きで、前回のブログ「【インボイス】未登録者のための「値引き」対応シミュレーション」について、訂正記事をアップさせていただきたいと思います。
訂正といっても、根本的な間違いがあるわけではないのですが、私自身、もっとスッキリさせたいと思い、今回、もう一度、「計算式」を改めることといたしました。
よろしくお願いいたします。
あるホームページに、私と同じように「値引き」対応の記事が掲載されていました。
URLは伏せておきます。
*********************************
例:取引先(インボイスなし)から仕入れ11,000円(内消費税1,000円)を行った。
インボイス制度開始前では1,000円が仕入税額控除となるので、実質負担が10,000円となりますが、インボイス制度開始後は消費税1,000円のうち80%のみ仕入税額控除を受けられるので、実質負担額が10,200円となります。
ここで200円を減額してしまいそうになりますが、200円減額すると税込10,800円(内消費税981円)となり実質負担額は9,819円(税抜)+981(消費税)×20%=10,015円の負担になります。
よって実質負担額10,000円を算出するには、下記の計算式によって算出をしなければなりません。
値引き後の税抜価格をXとすると、
X×0.02+X=10,000円となり、
この式を整理すると、1.02X=10,000円となります。
本計算を行うと値引き後の税抜金額が9,804円となり、値引き額が196円と算出されます。
「9,804円(税抜金額)+980円(消費税)×0.2=10,000円」
値引きの交渉の際にご参考にしていただければと思います。
*********************************
非常に理路整然と説明されています。
でも、「値引き額が196円で良いの?」と疑問を持ちました。
私の前回の記事でのシミュレーションで計算した値引き額は、220円(精緻に計算すると216円)になるわけで・・・。
ハイ、お分かりの方もいると思います。
上記の例は、「税抜き」で計算した場合の値引き額なんですね。
したがって、「税込み」で計算した場合の値引額は、196円×1.1=216円
ということで、私のシミュレーション(精緻に計算した)額と一致するわけです。
ただ、上記の記事をスーっと読むと、税込みの金額から196円を値引きすれば良いと勘違いする方がいるかもしれません。
このホームページは、金額を入力すると値引額、請求額が自動計算されるので、便利だと思います。
https://zeimo.jp/tool/invoice-deduction-bill
ここで、上記例(11,000円)の値引き金額等を確認してみました。
ハイ、ちゃんと値引き額(税抜き)が196円で計算されてます。
また、「請求書に記載する金額」欄の合計(値引き後の金額)は10,784円と計算されていて、値引き額(税込み)は、11,000円-10,784円=216円となっています。
できれば一発で、値引き額(税込み)を算出できたら良いですよね。
ということで、計算式を考えてみました!
X=値引き後の価格(税抜き)
Y=値引き前の価格(税抜き)
Z=値引き額(税込み)
冒頭紹介したホームページの計算式(*は掛け算です)
1.02*X = Y
XとYは、税抜きなので、税込みにします。
1.02*X*1.1 = Y*1.1
そこから、式を展開していきましょう!
1.02*X = Y
※ 税込みにするために、右も左も1.1を掛けているので、結果、冒頭の計算式に戻りますね(^^;
X = Y ÷ 1.02 Z = Y - X
Z = Y - Y ÷ 1.02
1.02*Z = 1.02*Y - Y
1.02*Z = Y*(1.02 - 1)
1.02*Z = Y*0.02
Z = Y*0.02 ÷ 1.02 ≒ Y*0.0196078 ≒ Y*1.961%
では、税込み価格 11,000円について、上記計算式に当てはめてみますと、
11,000 * 0.01961 = 215.71 ≒ 216 円(切上げ)
となりました!
前回のブログで紹介した計算式は、ホント原始的に導き出したもので、申し訳ないです。
エクセルで演算式を入力しながらシミュレートしたもので、もっと原則を勉強した上で、計算式を導き出すべきでした。
(ただ、私の「悪戦苦闘ぶり」が記されている記念に!?、ブログは消さずに残しておきます。)。
さて、正式な「解」は求められましたが、飲食店では、税込み価格で精算しているお店がほとんどです。
なので、「お支払金額の1.961%を値引きします」と言うのは、お客様にご理解いただくのは難しいと思われます。
「なっ、なんで、そんな金額になんねん。説明しろや!」と言われるかも・・。
(上記ご紹介したホームページのシミュレーション結果を表示して説明しても良いのですが・・。)
それよりも、前回のブログで記したように「お支払い金額の2%を値引きします」と言った方が分かりやすいですし、トラブル回避になると思います。
くれぐれも、従来のレジをお使いで、レシートに表示された消費税の2%を値引き額としないでください。その金額だと、税抜きの値引き額となり、お客さんが損することとなりますので。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
残暑お見舞い申し上げます。
先日の台風、風も雨も凄かったです。
被災された方には、お見舞い申し上げます。
さて、私は、納税協会等で、インボイス制度や電子帳簿保存法のセミナー講師を務めています。
なので、日々最新情報を入手して、受講者の方にお伝えさせていただくよう心がけています。
今朝、ネットニュースを見ていると、
「電気代がインボイス制度導入で10月に値上がり…電力会社の負担が消費者にしわ寄せ」
という記事が出ていました。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/270876
今回は、この点を絡めて、インボイス制度の「歪み」について解説したいと思います。
現行(2023年9月30日まで)は、3万円未満の取引は領収書がなくても、帳簿に取引を記載するだけで、消費税の仕入税額控除が認められています。
国税庁HPを見ると、以下のように記載されています。
********************************************************************
課税仕入れ等に係る消費税額を控除するには、その事実を記載し、区分経理に対応した帳簿および事実を証する区分記載請求書等の両方を保存する必要があります。
(中略)
なお、取引の実態を踏まえ、次の特例的な取扱いがあります。
特例的な取扱い
1 税込みの支払額が30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよいこととされています。
(以下、略)
********************************************************************
ここに書かれているように、経済取引や会計処理の実態を踏まえ、特例的な措置が講じられていということでしょう。
令和5年10月に導入されるインボイス制度では、上記制度が改悪!?され、限定した取引しか3万円未満の特例が適用されなくなりました。
国税庁HPのQ&Aには、次の取引が限定列挙されています。
********************************************************************
① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品の購入
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
********************************************************************
インボイスは、「税の転嫁を適正に伝える手段」のために導入されたという背景があるので、原則「すべての取引にインボイスが必要」という考えになるのでしょう。
でも、先述したように、取引の実態を考えると、非常に煩雑になります。
さらに、インボイスが無ければ仕入税額控除ができなくなるため、これまで免税事業者であった者も、インボイスを発行するためには課税事業者になる必要があり、例えば、次のような事業者に影響が出ると言われています。
イ 建設工事労務者(一人親方など)
ロ 生命保険外交員
ハ フリーランス
二 個人タクシー
ホ 飲食店(接待で利用する居酒屋等)
へ 駐車場経営者(タイムズ等コインパーキング)
日本税理士会連合会は、税制改正要望として、現行の「3万円未満の特例」を継続するよう要望を出していました。
で、結果(令和5年度税制改正)は、
インボイス制度開始後6年間、次の事業者に限って、1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみで仕入税額控除が可能となる特例です。
(対象となる事業者)
・ 基準期間における課税売上高が1億円以下
・ 特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者
すべての事業者でなく、基本、売上高が1億円以下の小規模事業者が対象。しかも、6年間の期間限定という措置となってしまいました。
これって、現行の「取引の実態を踏まえた」思想を無くしてしまった、ってことでしょうか。
事業規模が大きければ取引も多く、事務が煩雑になるわけで、何故こんな、みみっちい改正をしたのか理由がわかりません。。。
さて、冒頭の記事の話です。
最近は、ECO住宅ということで、太陽光パネルを設置した家が増えてきました。
太陽光発電により、自宅で使用する電気を賄える。また、余った電気は、電力会社が買い取ってくれる。
その買い取りは、電力会社の仕入税額控除の対象となるわけです。
電力会社は、仕入税額控除するためにはインボイスが必要。
一般家庭は、課税事業者ではない(免税事業者)ため、インボイスを発行できない。
そのため、電力会社は、仕入税額控除ができないため、その損を消費者に転嫁。
結果、インボイス制度導入後は、電気代が上がってしまう。
というわけなんです。。。
一般家庭の売電収入ですが、自宅の電気に使用した後の「余り」ですから、1か月の売電額は、1万円も行かないのではないでしょうか⁉
とすると、「1万円未満の特例」が適用できる!と一瞬思ったのですが、その適用が可能なのは、1億円以下の事業者。しかも、6年間限定。
電力会社は、当然1億円を超える大企業ですから、この特例は使えません。
では、太陽光発電している一般家庭に、課税事業者になってもらってインボイスを発行してもらえばよい? それも「酷」というものです。
インボイス制度は、消費税の理想の姿であるのはわかりますが、やはり、現行の「取引の実態を踏まえた」措置が必要ではないでしょうか。
1万円を3万円に引き上げろとは言いませんが、
・ 対象となる事業者の制限を撤廃して、全事業者とする
・ 6年間の期間限定ではなく、恒久的に特例措置を認める
と改正すれば、今回の電気代の上乗せ問題も解決されるのではないでしょうか。
今回は、ネット記事を読んで、緊急上程させていただきました。
記事を読んで、「なるほどなぁー」と思った次第。
電気代だけでなく、ほかにも同じような転嫁問題があるかもしれません。
何度も言うように、取引の実態を踏まえた「制度」にしないと、経済自体が回っていかなくなる、会計処理が煩雑になり効率化が削がれていく。
⇒ 結果、日本の経済全体を弱体化させてしまうことに。。
ぜひ、政府(財務省)には、今回の制度の「歪み」について、再検討していただきたいものです。
新年明けましておめでとうございます。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
もう1月の中旬。
長らくブログを更新してなく、すみませんでした。
というのも、年明け、年末調整、法定調書、給与支払報告書、更には、償却資産の申告と、矢継ぎ早に事務が重なり、なかなかブログを更新する余裕が無く・・。
今回初めて、e-Tax(国税)だけでなく、eLTAX(地方税)に挑戦。国税と地方税では、システムの流れが違って戸惑う面もありましたが、何とか完了(汗)。
さて、前回、令和5年度税制改正大綱の税調資料を基に、更なる緩和措置をご説明しましたが、新たに資料を入手しましたので、それに基づき、もう一度、復習したいと思います。
現行、登録申請は令和5年3月31日までに行え!と言ってたわけですが、やはり申請件数が伸びないようで、改正案では、3月31日の期限を撤廃したようです。
また、登録を行おうとする「日」については、現行、1か月前までに登録申請書を提出することとなっていましたが、それが短縮され、15日前までとなりました。(登録の取り止めも、15日前に短縮)
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日に属する課税期間において、免税事業者から適格請求書発行事業者になったこと、又は課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者となる場合は、消費税額の計算上控除することができる消費税額(仕入税額控除)は、売上に係る消費税額に8割を乗じた金額とすることができる。⇒ 納付する消費税額は2割!
※1 ①課税期間の特例適用を受けている場合、及び②令和5年10月1日以前から課税事業者選択届出書を提出したことにより引続き課税事業者となる場合は、適用されない。
※2 簡易課税選択届出書を提出している場合でも、申告時に2割特例か簡易課税のどちらを適用するか選択が可能。
※3 本適用を受けた課税事業者が、当該適用を受けた翌課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その課税期間から簡易課税を適用することができる。
① 基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1億円以下である事業者については、インボイス制度の施行から6年間、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除を可能とする。
※ 課税売上高が1億円超であったとしても、前年又は前事業年度開始の日以後6か月の期間の課税売上高が5,000万円以下である場合は、特例の対象とする。
※ 1回の取引の課税仕入れに係る税込みの金額が1万円未満かどうかで判定(1商品ごとではないことに留意)
② 1万円未満の売上対価の返還等(値引き等)を行う場合についても、インボイスの発行を免除する。⇒ 全事業者が対象!
いかがでしょうか、上記の緩和措置。
前回のブログでも記載しましたが、「小手先」で特例措置を追加しているという感が否めません。
逆に混乱するというか、会計ベンダーは、システム修正が大変に。経理担当者も、苦労するのではないでしょうか・・・。
さて、今回のブログで、インボイス制度についてほぼ網羅できたと思っていて、このシリーズもいったん終了。
ただ、税制改正大綱を受けて、今後、国税庁のQ&Aが改訂されていくと思われ、特に判断が迷う点については、追補として、紹介していくことといたします。
これから確定申告で忙しくなりますが、余裕があればブログを更新していきますので、今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m
おはようございます、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
サッカーW杯、日本は惜敗。残念でしたが、日本全体を沸かせてくれました。選手の皆さん、ご苦労様でした。
昨日は、南納税協会で、第6回目の「インボイス制度・電子帳簿等保存法」のセミナー講師を務めました。参加された皆さんは、熱心に聴講されていて、インボイス制度等に対する関心が高いのがわかりました。
さて、令和5年度税制改正大綱が、明後日(12月16日)に発表されるようです。
その中で、インボイス制度の緩和措置が盛り込まれるようで、今回は、速報!として、Twitterから入手した資料に基づき解説したいと思います。
(令和4年11月18日 朝日新聞の記事から抜粋)
来年10月に導入される消費税のインボイス制度について、政府・与党は少額取引の場合はインボイスがなくても税額控除できるようにする期限付きの特例措置を設ける方針を固めた。対象の取引額は1万円未満とする案が浮上している。制度の導入に伴う小規模事業者の負担を軽減する狙い。
政府・与党は数年間に限り、一定額以下の取引については、従来通りインボイスなしで控除を認める方向だ。期間や対象取引額などの詳細は、今後の与党税制調査会で詰め、12月中旬にまとめる与党税制改正大綱に盛り込む。
取引額については「1万円未満」とする案のほか、一部業界からは「3万円未満」とする要望がある。ただ、額が大きくなるほど、正確な納税を促すインボイス制度の目的に逆行しかねない。
特例措置の対象となる事業者は絞られる見通しで、年間売上高が1億円以下の事業者に限るとする案が上がっている。
Twitterから入手した税調資料は、以下のとおりです。
↓
上記1は年間売上高が1億円以下の事業者に限定されていますが、この措置は、全課税事業者に適用されます。1万円未満の取引(値引等)については、インボイスが不要となります。
返還インボイスについては説明を省略しますが、要は、前回のブログで解説した「銀行等の振込手数料を負担した場合のインボイスの取扱い」については、この措置により、インボイスが不要(帳簿の保存でOK)になるということです!
Twitterから入手した税調資料は、以下のとおりです。
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(令和4年11月20日 朝日新聞の記事から抜粋)
来年10月に導入される消費税のインボイス制度について、政府・与党はフリーランスなど小規模事業者の負担を抑える新しい期限付き特例をつくる方針を固めた。
消費税の納付義務が免除されている「免税事業者」がインボイスを発行するために「課税事業者」に転換した場合、3年間は売上税額の2割を納めれば済む方向で検討する。円滑な制度導入を促すねらいがある。
小規模事業者が課税転換すれば、業種ごとに定められた仕入れ率で納税額を計算できる「簡易課税」の適用を受けられる。
簡易課税制度の2割版ということですかね。
この場合、事前の届出を必要とせず、通常の消費税の算出額と比較して、どちらか低い税額を選択するようになるとのこと。
現在は免税事業者で過去に簡易課税を選択した人も、事前の届出は必要ないようです。
Twitterから入手した税調資料は、以下のとおりです。
↓
前回のブログで記載した電子帳簿等保存法もそうですが、インボイス制度も、なんかグダグダになってきました。
上記1については、何故、年間売上高が1億円以下に限定するのでしょう。何故、1万円未満なんでしょう。全事業者を対象に、現行通り「3万円未満」でも良いのではないでしょうか⁉
上記2については、上記1ついて全事業者を対象にすれば、特に規定する必要はない!?
上記3については、免税事業者の登録申請が進んでいないようで、政府としては、なんとか登録事業者=課税事業者になって欲しいという思惑が見え隠れしています。
ある税理士さんのブログに、「免税事業者もインボイスの発行を認めてはどうか」という意見をされていました。
確かに、インボイス制度の趣旨が「売り手が買い手に対して、正確に適用税率や消費税額等を伝える」ためだということであれば、免税事業者もインボイスを発行できるようにすればよいと思います。免税点(1千万円)の見直しは、別にすれば良いと思うのですが・・・。
いずれにしても、インボイス制度の法律を作った際に、事業者の実情や日本の商慣習等を踏まえた議論や検討をしてこなかった。そのため、いわば「小手先」で特例措置を追加しているという感が否めません。
私は国税出身ですが、財務省主税局は、法律を作る前に、現場を知っている国税庁と、もっと意見交換をしてほしかったと思っています。
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
最近は、天気が良くて「秋晴れ」が続いています。
一方、コロナが徐々にですが、増えてきていて・・。
空気も乾燥していますので、インフルエンザも気を付けないといけませんね。
さて、先日のブログで、私が開発した電子帳簿保存法対応「ファイル一覧表作成システム」をご紹介しましたが、初めてメールで、このシステムを使ってみたいとのご連絡をいただきました♪
現在、納税協会で「インボイス制度と電子帳簿保存法」のセミナー講師をさせていただいていて、セミナーの参加者にも、もれなく⁉このシステムを配付しようかと考えています。
簡単なシステムですが、結構使えると思います。もし、お入り用なら、ご連絡くださいマセ!
今回は、インボイス制度で質問の多い事項の第二弾です。
取引先との決済を銀行振込している場合が多いと思いますが、その振込手数料を当方が負担した場合、インボイスはどうすれば良いの?という質問です。
まずは、国税庁のQ&Aを見てみましょう。
と思ったら、この銀行振込の手数料に係るインボイスの取扱いについての記載がありません。
しかし、どこかに、当てはまるQ&Aがあるはずです。
これですかね⁉
↓
問82 適格請求書等保存方式の下では、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件ですが、
一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の要件を満たすのは、どのような場合
ですか。
この「問」は、以前ブログに書いた「3万円未満」の特例に関することです。
で、その「答」として、3万円未満の特例が適用されるのは限定列挙されており、その中に次の記載が、振込手数料にも該当すると思われます。
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
そこで、次のような質問を考えてみました。
Q. 仕入先の決済を銀行振込で行っていますが、その振込手数料を負担しています。
この場合、請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。
この場合の「答」ですが、ケースによって異なると解されています。
ATMも「自動サービス機」に該当しますよね!
なので、次のような回答となるようです(主税局担当官の談話資料を引用)。
A.3万円未満の自動販売機や自動サービス機による商品の販売等は、適格請求書の交 付義務免除されます。金融機関のATMによる入出金サービスや振込サービスのように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものも該当します。
この場合、帳簿には、銀行名(支店名は不要)とATMの所在地(市町村名まで)を記載する必要があるようです。⇒面倒くさいですねぇ・・。
A. ATMと異なり、インボイスを保存する必要があります。
※ 「機械装置」とはみなされず、銀行の窓口で行う場合と同じ扱いとなる・・。
えぇっ、今やATMよりネットバンクを使うのが主流。それなのに、インボイスが必要になるってこと!!
なんか、全然時代にそぐわない扱いだと思いませんか⁉
更に、電子取引となりますから、改正電子帳簿保存法では、スクリーンショットするなどして電子ファイルを保存しておかなくてはなりません!
ホンマかいな・・・。
インターネットバンクも、パソコンという「機械装置」を使っていると解しても良いのではないでしょうか。
あくまで現段階での「見解」ですが、この点は、是非、弾力的な取扱いにして欲しいと思います。
皆さん、どう思われますか?
インボイス制度は、令和5年10月から開始。もう1年を切ってしまいました。
ほぼ毎日、国税庁HPのインボイス特集を見て、Q&Aが更新されていないかチェックしていますが、最近、更新が止まっています・・。
このままでは、事業者は、インボイス制度に対応することが難しいのではないかと。
もっと、いろんなケースを想定して、Q&Aを作って欲しいものです。
国税庁さん、もっと頑張って下さい。いや、もっと頑張らんかい!!
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
もう11月、ずいぶん涼しく(寒く⁉)なりましたね。
税務署からは、年末調整の書類が届きましたし、年賀状も発売。いよいよ年の瀬が近づいてきた感じがいたします。
このインボイス制度のシリーズも、終盤を迎えることとになりました。
あと2回で、一旦、終了。
今回からは、「特に質問の多い事項」をご紹介したいと思います。
これは、国税庁のインボイスQ&Aからの抜粋となります。
国税庁のQ&Aを見てみましょう。
Q. 事務所の賃貸料を口座振替で支払っており、請求書や領収書の交付は受けていません。このような場合、請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。
A. 仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。
なお、適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできるで、相手方(貸主)から一定期間の賃借料について適格請求書の交付を受け、それを保存する対応も可能です。
また、適格請求書として必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになるので、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たします。
ご質問の場合、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
(ポイント)
・ 口座振替等の場合、毎月、請求書等を保存する必要はない。
・ 契約書に不足する情報(登録番号等)を付加することで対応可能。
・ ただし、毎月の家賃等について、その取引の事実がわかる書類(通帳、振込金受取書等)を保存
不動産賃貸の契約書にインボイスの情報を付加する場合、新規(更新)契約では、その情報を含めた契約書を作成します。
一方、既存契約では、新たに契約書を交わす必要はなく、追加情報を記載した通知書を交付することで対応します。
なお、その通知は、メールでも可とされています。
新規(更新)契約の場合の
既存契約の場合
今回は、家賃を例に、対応方法を説明しましたが、家賃だけでなく、例えば、税理士への報酬等についても、同様のケースが想定されます。
国税庁のQ&Aについては、今後も、様々な商取引や慣習に対応するため更新されていくと考えられますので、その都度、ブログで紹介していきたいと思います。
しかし、インボイスの登録期限(令和5年3月)まで、5か月を切りました。
円安等によるインフレなど現在の経済情勢を踏まえると、インボイスの導入ってタイミング的にどうなんでしょう。経済への影響が心配です・・・。
年末には、令和5年度税制改正大綱が発表されます。何らかの動きがあるかもしれません。
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
2週間ぶりの更新となります。
今週は、セミナー講師を2回やりました。
一つは、納税協会の「インボイス制度と電子帳簿等保存法」
当初2回のセミナー開催を予定してましたが、受講希望者が殺到し、都合7回、1月までセミナーを開催することとなりました。嬉しい悲鳴⁉
セミナー終了後に多くの質問を受けておりまして、その内容を、セミナーの資料に取り込みバージョンアップしています。
電子帳簿等保存法にご興味のある方も多いですね。
もう一つのセミナーは、出身大学である関西大学の会計職専門大学院(梅田キャンバス)での講義。
「個人課税の論点」として、こちらは所得税の有名な判例を紹介して、グループ討議を行いました。
競馬の馬券払戻しの課税関係など、身近な話題を中心とした講義で、それなりに所得税についてご興味を持っていただけたかなと思っています。
さて、この「インボイス制度」のブログ。前回はラス前、今回で終了を思っていましたが、納税協会のセミナーでのご質問が多かった内容を含めて、あと2回ぐらいはブログにアップしたいと思います。
今回は、消費税の端数処理。インボイス制度では、取扱いが変わりますので、要注意です!!
国税庁のQ&Aの解説を見てみると、
適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(新消令70の10、インボイス通達3-12)。
なお、切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすることができます。
(注) 一の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することは認められません。
と解説されています。
(ポイント)
○ 現行の区分記載請求書では、消費税額が記載事項になっていないため、端数処理のルールは定められていなかった。
○ 一方、インボイス制度では、端数処理のルールが定められ(一のインボイスにつき、税率の異なるごとに1回)、税率ごとに合計した対価の額に税率を乗じて消費税額を求めることになる。
○ これまで、レシート等で「明細行」ごとの端数処理を行っている場合には、システムを改修する必要も。
次の記載例を見ていただくとわかるとおり、1円単位で消費税額が変わってしまいます。
業種によりますが、例えば、スーパーが飲食店に食料品等を卸していて、配達の都度、消費税を記載した「納品書」を渡すとともに、翌月、ひと月分の取引金額を記載した「請求書」を発行している場合があります。
この場合、納品書が「一の適格請求書」=インボイスとなると国税庁は言っています。なので、月次請求書は、インボイスになりません。
その月次請求書に基づいて会計処理を行った場合、やはり端数処理の関係でズレが生じてしまうことがあります。
請求書発行システムと会計処理システムが一体となっていれば、ズレは生じないのですが、そのようなシステムを導入しているケースは少ないと思われます。
この点について、財務省担当官が参加した座談会で「ひと月分の請求書で会計処理を行った消費税額でも認められる」と話されていますが、国税庁HPでは正式なコメントを発表していません。なので、今後、Q&Aに掲載されるかどうか注視していきたいと思います。
インボイス制度は、ヨーロッパで導入され、それをベースに日本で導入されようとしています。
ただ、上記の「納品書 + 月次請求書」といった事例は、日本独特の商慣習であり、インボイス制度を定着させるためには、今後、業種ごとの取引実態に沿った取扱いをQ&A等で公表していく必要があると感じています。
次回は、私がセミナーの講師をやっていて、「特に多い質問」を紹介したいと思ってます。
乞うご期待⁉
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
随分ご無沙汰しておりました。
だんだん税理士業務を忙しくなり、ブログの更新が疎かになっておりましたm(__)m
8月から、税務支援として「記帳指導」を担当することとなり、ご事業を始められた方に、帳簿の付け方を指導しております。
帳簿の付け方と言っても、今やパソコンによる記帳が一般的。
ということで、「やよいの青色(白色)申告」や「free会計」を使った指導を行っています。
どちらの会計ソフトも、パソコンだけでなく、スマホアプリが用意されていて、クラウドで連携しているので、スマホで入力した内容が即座にパソコンに反映されます。ホント、便利な世の中になったなぁ~と思っています。
当然、消費税の入力もできますし!
さて、これまでご紹介してきましたインボイス制度も、ラスト2回となります。
今回は、「簡易適格請求書」についてご説明したいと思います。ホント「簡易」なのでしょうか?
小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業又は駐車場業等の不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業者は、「適格簡易請求書」を交付することができる。
・ 「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」は省略可能
・ 「適用税率」又は「税率ごとに区分した消費税額等」のいずれかを記載すればよい。
となっています。
その書式は、次のとおり。
これまで説明したとおり、適格請求書は、課税事業者しか発行することができません。
でも、免税事業者でも、レシートや領収書を発行する(要求される)ケースがあります。
免税事業者が発行するレシートには、「登録番号」を記載することができません。
「登録番号」を記載していないレシートを発行したお店は、スグに免税事業者と判ってしまいます。
しかし、免税事業者であっても、レシートに消費税額等を記載することが禁止されているわけではありません。
「できれば、消費税を記載したレシートを発行したい」と思う免税事業者もいるでしょう。特に、飲食業の方などは・・・。
その場合、上記簡易適格請求書の様式を真似て、「消費税額」又は「適用税率」を記載することとなります。
さて、「消費税額」と「適用税率」、どちらを記載すれば良いでしょう?
「消費税額」を記載していると、
「(登録番号の記載がないのを確認して)免税事業者やのに、何で消費税取ってんねん!」
と言われるおそれがあります。
なので、レシートには「適用税率」を記載しておいた方が、トラブルを回避できるのではないか、と思われます。
【小規模な飲食店や小売店の場合】
例1)小さな居酒屋だが魚が美味しいので、取引先の接待に利用。
経理部署に手書きの領収書を渡すと、今後は、インボイスの領収書を貰えないなら、交際費を認めないと言われた。
⇒ 免税事業者から登録事業者になって、インボイスを発行する?
例2) 会社の隣にある雑貨屋さん。会社で、消耗品や残業時の夜食を購入。会社は、貰った紙の領収書に、消費税を区分記載(追記)して保管。
⇒ インボイスでは、消費税の追記(補完)は禁止
以上、インボイス制度が導入されれば、レシートの発行は必須になるのではないでしょうか。
しかし、小規模なお店で、レシートを発行するためには、今、テレビCMされている、AirREGIのようなシステムを新たに導入する必要が出てきます。
まぁー、昔のような本格的なレジでなく、スマホやタブレットで代用できますし、WIFIで、クラウド会計と連携でできるので、便利にはなるわけですが・・。
上記のように、インボイス制度が導入されると、最低限のシステムの導入・改修が必要となってきます。
その意味では、レジや会計ソフトの会社にとって、インボイスは商機到来!!
更に、電子帳簿等保存法による「電子取引データ」の保存義務も、ほぼインボイス制度と同時期に導入されるので、現在、財務・会計ソフトの会社は、躍起になって、自社ソフトの売り込みを行っているようです。
しかし、これまで説明してきたように、インボイス制度は、日本の商慣習にそぐわない面もあり、それを踏まえて、今後、どのような法律改正が行われるかわかりません。
また、将来的には、デジタルインボイスの導入も予定されています。
なので、もう少し様子を見てから、システムの導入や改修を行った方が良いように思いますが、いかがでしょうか・・。
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
昨日は、淀川花火大会に行ってきました。
「行きはよいよい帰りは怖い」のごとく、凄い観客で、退場規制と、最寄りの駅まで大行列で、帰るのに1時間以上掛かってしまいました。
でも、真下から見る花火は、迫力が全然違いました!それも、YOASOBIやミスチルの曲にのせて、花火が四方八方に打ち上げられたのは圧巻でありました。
また、今日は日曜日ですが、記帳指導を行いました。
まだ開業したばかりの納税者でしたが、会計ソフト「freee」を使って、真面目に記帳をなさっておられました。
記帳指導を行うのは初めてですが、今後も、いろんな経験をしていきたいと思っております。
さて、インボイス制度のシリーズも6回目となりました。前回は、免税事業者問題を取り上げましたが、今回は、インボイス制度導入に伴う「激変緩和措置」について解説したいと思います。
免税業者から請求書が送られてきました。
その請求書には、「登録番号」が記載されていない。
ということは、仕入税額控除が出来ない。それが原則であります。
しかし、インボイス制度が導入されて6年間は、激変緩和措置として、免税事業者との取引でも、仕入税額控除ができる制度が設けられています。
具体的には、以下のとおりです。
上記、特例措置により仕入税額控除を受ける場合、どのように仕訳をすれば良いでしょう?
80%又は50%しか仕入税額控除が受けれないわけですから、その分の消費税が「損」となります。
実際に具体例をお示ししましょう。
《仕訳例》
イ 免税事業者から、11,000円の消耗品を現金で購入
例1)
消耗品費 10,200 / 現金 11,000 ※(摘要:80%控除対象)
仮払消費税 800
「摘要」欄に記載する代わりに、※を表示してもよい(注記に「※は80%適用対象」と表示)
例2)
<期中処理>
消耗品費 10,000 / 現金 11,000 ※
仮払消費税 1,000
<決算処理>
雑損失 200 / 仮払消費税 200
ロ 免税事業者から、440,000円の備品を掛で購入
備品 408,000 / 買掛金 440,000 ※
仮払消費税 32,000
※ 減価償却資産については、控除できない20%分は資産の取得価額に含めることとなります。
免税事業者から仕入れた商品(棚卸資産)については、現行でも、調整措置があります。
インボイス制度が導入された場合も、同様の調整措置(6年間の経過措置)が令和4年度の税制改正で既定されました。
(令和4年度税制改正)
インボイス移行に係る免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の期間(令和5年10月1日~令和11年9月30日)において、免税事業者から課税事業者となる場合に、その免税事業者であった期間中に免税事業者等から行った仕入れに係る棚卸資産についても、その消費税額の全額を仕入税額控除できる。
(改正前)仕入先が免税事業者の場合、80%(50%)の調整が必要
(改正後)仕入先が免税・課税事業者問わず、全額仕入税額控除
やはり、インボイス制度が導入されると、免税事業者との取引については、ややこしくなりますね。
SNSを見ていると、
・ インボイス制度を導入するよりも、免税制度をやめたらどうか
・ インボイス制度導入で、事務処理の負担が増加
・ 3万円未満の取引すべてについて、インボイスを不要にして欲しい
といった意見が散見されます。
現在、国税庁のHPに、「インボイス制度」の特集ページが設置され、毎月、Q&A(一問一答)が更新されていますが、中には、会社等の経理処理にそぐわない回答も見受けられます。
インボイス制度が円滑に導入されるためには、これまでの日本の商習慣に沿ったガイドラインを策定してほしいと思いますが、いかがでしょうか・・。
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
毎日、暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
先週は、納税協会主催セミナー「インボイス制度と電子帳簿保存法」の講師を務めました。
このブログで紹介している内容を、2時間コンパクトにまとめて、お話させていただきました。
セミナー終了後、参加された方が、自社の請求書を持参されて、インボイス制度導入後の書式について質問されることもあり、皆さん、インボイス制度の関心が高いなぁーと思った次第です。
さて、前回は、現行「3万円未満の特例」が、インボイス制度が導入されると、極めて限定的になるというお話と、免税事業者にとっては、インボイス制度の導入により、課税事業者になるかどうかの選択を迫られるというお話をさせていただきました。
で、今回は、その続編として、インボイス制度の導入に向けた経済取引の動向を紹介したいと思います。
現在は、免税事業者が消費税を受領すること⇒「益税」という問題をはらんでいるわけですが、インボイス制度が導入されると、免税事業者も登録事業者になり消費税を支払うようになることで、益税問題が解消されると言われています。
一方で、登録をしない事業者は,取引先から、
・ 登録事業者になれ!
・ 登録しないのであれば、消費税分値引きせよ!
と言われる可能性があるということです。
特に、値引きを強要されると、小規模事業者にとっては死活問題になりかねません。ご自身は、益税とは認識しておらず、取引先とは、いわば「込み込み」で取引金額を決めていたわけですから。。。
このため、公正取引委員会では、インボイス制度の導入に伴う値下げの強要については、ガイドラインを示して注意喚起していますが、最終的には、B to Bで協議してくださいねといった内容となっていて、拘束力や罰則は無いと思われます。
消費税のセミナーで引っ張りだこの、金井恵美子先生はとても有名な方です。
その先生が、税研217号(2021年5月号)で寄稿されていますので、ご紹介しておきます。
「揺らぐ事業者免税点制度」=抜粋=
・ 親事業者が、下請事業者に対して消費税の転嫁拒否等の行為を行うことは、下請法 上の問題となり得る。公正取引委員会は、消費税転嫁対策特別措置法の失効後においても、消費税の転嫁拒否等の独占禁止法違反行為及び下請法違反行為に対し、厳正に対処することとしている。
・ すでに適格請求書等保存方式への移行を理由として、課税事業者でなければ取引しない旨の通告、すなわち「事実上の課税選択の強要」の動きが見られる。免税事業者である仕入先に対して、現行の取引額から、その100/110相当額(6年間の経過措置を踏まえた計算による場合もある)への改定を要求することは、消費税の転嫁拒否を疑う危険な行為である。
・ 仕入先ごとに仕入税額控除の適否を振り分けるという複雑なオペレーションは、容易に受け入れられるものではない。かくして、「事実上の課税選択の強要」となるのであるが、これも独占禁止法あるいは下請法に抵触する可能性があり、慎重に対応する必要がある。
・ フランチャイズ事業においては、フランチャイザーが、登録事業者か否かという加盟店のステイタスによってインボイス発行の有無という異なるシステムを提供することは困難であり、同一商品について店舗によって異なる2つの価格を設定することも現実的ではない。したがって、登録事業者となることをフランチャイズ加盟の要件とする方向で検討されるものと考えられる。
・ 事業者免税点制度は、事務能力に乏しい小規模事業者を救済する制度であるが、適格請求書等保存方式は、彼が免税事業者にとどまることを許さない。この矛盾を解消するためには、どちらかの制度をあきらめるしかないだろう。創設以来30余年を経た今さらのインボイス制度の導入を非難する声がある一方で、免税事業者が取引から排除されるという問題が、功を奏するという見方もある。事業者免税点制度は、税の転嫁のしくみを歪め、益税問題を惹起し、その趣旨に沿わない利用を防止するために複雑化している。適格請求書等保存方式への移行により、小規模事業者の多くが生き残りをかけて課税事業者を選択すれば、事業者免税点制度の形骸化によって、問題が縮小し、ひいては事業者免税点制度の廃止を視野にいれた抜本的な見直しに繋がるかもしれない。 消費税制度の改革の道程には、事業者の数しれない苦悩が存在する。
※ 太字・赤書は、筆者(私)が脚色
会計ソフトfreeeのアンケート調査によると、大手企業は、免税事業者に対して課税事業者への転換依頼を行っているようです。
私が聞いた話ですが、空き地を利用してコインパーキングを経営されている方が、大手コインパーキングの運営会社から、課税事業者になってくれとの依頼があったと。
確かに、コインパーキングの施設は、運営会社が管理してますから、全国至る所にあるコインパーキング。その経営者が課税事業者になってもらわないと、運営会社は仕入れ税額控除ができなくなり、大きな損失となるわけです。
う~ん、金井先生も相当悩んでおられる感じがします。
しかし、それ以上に、事業者の苦悩が・・・。
私が危惧するのは、益税の解消よりも、日本の経済構造が変わってしまう可能性。小規模事業者が、経済取引から弾かれる可能性をはらんでいるのではないかと。
皆さんは、どう思われますか?
おは・こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
先週は、納税協会が主催する「消費税入門セミナー」の講師を務めました。
申込者が多く、広い会場に変えての開催。2時間半の長丁場でした。
国税庁発行の「消費税のあらまし」を使って、消費税の仕組みや会計処理等を解説。
さらに、実際の消費税申告書の書き方演習も!
最後の30分は、インボイス制度について概要を説明いたしました。一番前で寝ていた受講者の方も、インボイス制度だけは興味津々で聞いておられました(笑)
さて、このシリーズも4回目。
インボイス制度が導入されたらどういう影響が出るか。深淵に触れてみたいと思います。
現行では、1 回の取引に係る税込みの金額が3 万円未満の取引に係る課税仕入れについては、請求書等の保存がなくても帳簿の保存により仕入税額控除を適用することができます。
しかし、インボイス制度が導入されると、次のような取引を除いて、適格請求書を保存しなければ、仕入税額控除は受けれなくなります。
イ 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による運送
ロ 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
ハ 生産者が農協、漁協等に委託して行う農林水産物の譲渡
二 古物商、質屋、再生資源業において行う物品等の譲渡
ホ 3万円未満の自動販売機による商品の販売等
ヘ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
いかがでしょうか。
一部、3万円未満の取引も含まれますが、非常に厳格に「線引き」されていると思いませんか?
ただ、農業や漁業所得者だけ、優遇されているような規定が見受けられます。
農業協同組合や水産業協同組合、森林組合の組合員である生産者が農協等に対して、⓵無条件委託方式による販売をし、その代金を⓶共同計算方式により精算する場合、生産者はインボイスの交付義務が免除されることとなっています。
この「インボイスの交付義務が免除される」って、回りくどい言い方だと思いませんか⁉
要は、免税事業者のまま取引が出来る、ってことなんです!
いわゆる「農協特例」と言われているものです。
しかし、インボイスの導入で影響を受ける業種は他にもあります。
イ 建設工事労務者(一人親方など)
ロ 駐車場経営者(タイムズ等コインパーキング)
ハ 個人タクシー
二 生命保険外交員
などなど・・・。
インボイス制度は、いろんな業種に影響を及ぼします。
やはり、登録事業者にならないと商売ができないのかも知れません。
既に対応を始めている業者も存在します。
《「レクサス個人タクシー」HPより》
「令和5年10月1日(2023年10月1日)から開始されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応するため、現在、全ての事業者において登録・申請を進めています。
現在は一部ドライバーのみ登録済みですが、未登録のドライバーも申請中(登録待ち)のため、近日中に全ドライバーの登録が完了する予定です。」
一方、「シルバー人材センター」の記事が紹介されていました。今後どのように対応されるのか心配です。
《「税のしるべ」令和4年4月18日号より》
個人事業主の扱いとなる同センター会員に支払われる報酬(配分金)は1人当たり月額平均で約3万8000円程度という。
この報酬額からインボイスの導入に伴って会員が課税事業者となると、同センターがこれまで控除できていた会員への報酬に含まれる消費税を控除できなくなり、同センターはその部分の消費税を支払う義務が生じる。
ただ、公益法人である同センターの場合、運営は収支相償(収入が適正な費用を償う額を超えない)を原則としており、新たな税負担に耐えうる財源はなく、死活問題になりかねないとされる。
今回は、問題提起という形で、インボイス制度の課題を紹介いたしました。
免税事業者=売上が1,000万円以下の事業者ですが、インボイス制度の導入によって、極めて多くの事業者が影響を受けることになると思います。
直接インボイス制度とは関係ないかも知れませんが、日本のアニメは世界的に評価されています。
ところが、その下支えをしているアニメーターは、非常に収入が低いとのこと。このままでは、優秀なアニメーターは、賃金が高い中国に流出してしまう、といった内容が報道番組で紹介されていました。
日本の経済も、収入1,000万円以下の小規模事業者が下支えしていると思われ、インボイス制度の導入により、経済構造がガラリと変わってしまうことも危惧されます。。。
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
昨日は、クライアントのお付き合いで、超名門のゴルフコースへ。
でも、朝から大雨☂
大粒の雨に打たれながら、頑張りましたが、深いラフと難しいグリーンに悩まされ、撃沈いたしました(:_;)
さて、今回は、一旦登録申請したけど、やっぱり止めたいという場合、どうすれば良いかについて、ご説明いたします。
適格請求書発⾏事業者の登録をやめようとする場合は、所轄税務署⻑に「適格請求書発⾏事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する必要がある。
原則として、登録取消届出書の提出があった⽇の属する課税期間の翌課税期間の初⽇に登録の効⼒が失われる。
ただし、登録取消届出書を、その提出のあった⽇の属する課税期間の末⽇から起算して30⽇前の⽇から、その課税期間の末⽇までの間に提出した場合は、その提出があった⽇の属する課税期間の翌々課税期間の初⽇に登録の効⼒が失われる。
なかなか難しいことを書いてますが、要は、取り止めする場合、
・ 法人であれば「決算期末」
・ 個人であれば「12月31日」
の30日前までに、登録取消届出書を提出しないとダメ!
間に合わなければ、1年先になるということです。
ココで気を付けていただきたいのは、
適格請求書発⾏事業者を止めても、消費税課税事業者は継続する!
ということです。
前回のブログで、令和4年度税制改正で、登録事業者の提出期限が弾力化されたと書きました。
思い出してください。
↓
ア) 免税事業者が令和5年10⽉1⽇から令和11年9⽉30⽇までの⽇の属する課税期間中に適格請求書発⾏事業者の登録を受ける場合には、その登録⽇から適格請求書発⾏事業者となることができることとする。
イ) 上記ア)の適⽤を受けて登録⽇から課税事業者となる適格請求書発⾏事業者のその登録⽇の属する課税期間の翌課税期間からその登録⽇以後2年を経過する⽇の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適⽤しない。
⇒「事業者免税点制度を適用しない」ということは、課税事業者を止めれない。
適格請求書発行事業者を止めたまま、消費税課税事業者として申告を続ける。事業者にとってメリットは無いと思われますが、法律上、ケースとして有り得ることとなります。
今回は、若干短めの掲載となりましたが、次の回から、インボイス制度の問題点など核心に触れた内容となりますので、今回は、ここで止めておきたいと思います。
私が加入している納税協会では、「インボイス制度と電子帳簿保存法」のセミナーを開催。その講師を私が受け持つこととなりました。
当初は2回の予定でしたが、応募者が殺到し追加で2回、計4回の開催となりました。
納税者の皆さんも、相当、インボイスへの関心が高まってきたのだと実感しております。
では、次回の更新をお楽しみに。できるだけ間を開けずに掲載したいと思います(^^;
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
昨日は、国税の人事異動の予告日でありました。
過去に同勤した後輩が署長になるなど、皆さん、ご栄進され、とても喜ばしいことであります。
インボイス制度や電子帳簿保存法など、税務行政が複雑・困難化している中で、後輩には頑張って欲しいと思っています。
では、シリーズでお送りしているインボイス制度。
今回は、制度の概要と、登録申請について解説したいと思います。
制度の概要は、次の表を見ていただくと、一目瞭然です。
赤色のアンダーラインしているところが、現行制度と異なっています。
・ 登録番号の記載
・ 請求書等の交付義務。写しの保存義務
・ 免税事業者は、発行不可
適格請求書発⾏事業者の登録を受けようとする事業者(課税事業者に限る。)は、所轄税務署⻑に登録申請書を提出する必要がある。
登録申請書は、令和3年10⽉1⽇から提出できる。
令和5年10⽉1⽇から登録を受けようとする場合は、令和5年3⽉31⽇までに提出する必要がある。
※ e-Taxで申請(代理送信)した際の留意点
・ 登録通知は、関与先のみ。税理士には通知されない。
⇒ 事前に関与先の利用者情報に税理士のメールアドレスを登録しておけば、通知登録があった旨の「お知らせメール」が送信される。
・ 通知データは、メッセージボックスではなく「通知書等一覧」に格納
【免税事業者の場合】
免税事業者が、令和5年10⽉1⽇の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録⽇から課税事業者となる経過措置が設けられている ⇒ 課税事業者選択届出書の提出不要
( 簡易課税制度を選択する場合)
上記の経過措置の適⽤を受ける事業者が、登録⽇の属する課税期間中に簡易課税制度の適⽤を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その課税期間の初⽇の前⽇に、その届出書を提出したものとみなされる。
どうやら、登録申請の「出」が悪いようで、令和4年度税制改正で、登録申請の提出について、弾力化が図られました。
ア) 免税事業者が令和5年10⽉1⽇から令和11年9⽉30⽇までの⽇の属する課税期間中に適格請求書発⾏事業者の登録を受ける場合には、その登録⽇から適格請求書発⾏事業者となることができることとする。
イ) 上記ア)の適⽤を受けて登録⽇から課税事業者となる適格請求書発⾏事業者のその登録⽇の属する課税期間の翌課税期間からその登録⽇以後2年を経過する⽇の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適⽤しない。
図示すると、以下のとおりになります。
インボイス制度については、まだまだ書きたいことがいっぱいあるのですが、できるだけシンプルに、単元を区切って解説していきたいと思います。
前回のブログで紹介したように、インボイス制度=免税事業者問題と言っても過言ではないかと。
その意味で、登録申請(期限)の弾力化が図られたことは、結構なことだと思いますが、まだまだ周知が足りないのではないかと思っています。
制度が分からないのに、登録申請をしようという人はいないと思います。
現在、参議院選挙の真っ最中ですが、各党とも、インボイス制度に言及する党は無いですね。
消費税廃止、5%に戻せ、といった話ばかり。
次回から、インボイス制度の問題点等も掘り下げていきたいと思っております。
乞うご期待!
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
長らくブログを更新しておらず、すみません。
急にクライアントが増えて、バタバタ(>_<)
先日は、滋賀県の草津まで出張しておりました。
さて、前回のブログで予告しましたとおり、これからシリーズで、インボイス制度と電子帳簿等保存法について、「ここだけは押さえておきたい」事項を解説していきたいと思います。
今回は、インボイス制度についての意識調査。
2021年11月に中小企業と個人事業主を対象に行ったアンケート調査結果についてであります。
イ インボイス制度を知っていますか。
・ 知らない 55.6%
・ 知っている 44.4%
〉ほとんど理解できていない 10.5 %
〉部分的、詳細まで理解していない 78.1 %
〉詳細まで理解している 11.4 %
ロ メールで送付された請求書等は、どのように管理していますか。
・ 印刷している 77.4 %
・ 印刷しない 20.3 %
ハ デジタル化を進めていく上で、ハードルとなっているのは?
・ システムの開発・導入にコストがかかる 32.5 %
ニ インボイス制度の導入に向けて、現在の対応状況は?
・ 対応していない 37.7 %
・ 対応に向けて検討中 33.7 %
・ 対応済である 13.7 %
インボイスを発行するためには、登録申請をしなければなりません。
これは、2021年10月から申請を受け付けています。
その10月に提出された申請件数は、4万6496件
2022年1月末現在の件数は、24万4,571件
をっ、なかなか順調!?
そして直近、2022年5月末の申請件数は、51万2,261件
全国に、どれだけの事業者があるかご存知でしょうか。
個人事業者も含めると、800万人社以上!
現在の免税事者が、どれだけ課税事業者として手を挙げるかわかりませんが、まだまだ登録申請は進んでいないようですね・・。
インボイス制度が導入されると、受領したインボイスが無ければ、仕入れ税額控除を受けることが出来なくなります。
現在、免税事業者(売上1千万円以下)の方も、インボイスを発行できないと、取引ができなくなる怖れが出てきます。
じゃぁ、インボイスを発行すればいいじゃん!ということですが、その場合は、課税事業者となって消費税を申告する義務が生じます。
また、現在、課税事業者の方であっても、インボイスを発行して、会計処理をするのに、相当な事務負担が掛かってきます。今から準備しておかないと、大変なことになると・・。
ですから、国税庁は、現在、免税事業者の方にも、登録をしてくださいとやっきになって勧奨をしています。
ということで、まずは登録申請をいかに進めるかが、導入の鍵を握っているといえるでしょう。
これから、インボイス制度と電子帳簿保存法をシリーズ化して解説していきますが、なぜ電子帳簿保存法が関係あるの?という方もおられると思います。
それは、以下のとおり。
◆ 23年に始まるインボイス制度では、請求書の発行側も控えの保存を義務付けられる上、請求書に記載された登録番号を一枚ずつ確認することが必須となるため、紙ベースでの処理では事務負担が膨らむものと予想される。
◆ ワークフローの見直しや事務処理のデジタル化といった措置により、業務の効率化を進めていく必要がある。
⇒ インボイス制度と電子帳簿等保存法は、表裏一体!
いかがでしょう?
インボイス制度と電子帳簿保存法(電子取引データの保存義務化)は、2023年11月から、一度にやってきます。
何度も申し上げますが、今から準備をしておかないと大変なことに・・。
ぜひ、私のブログで勉強していただければ幸いです。
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
長らくブログを更新しておらず、すみませんでした
実は、出身大学(関西大学)の会計人会に所属しており、来週、研修講師を務めることに。
研修の内容は、「インボイス制度と電子帳簿保存法」で、スクリーンを使って解説。
そのため、ここ2週間ほど、研修資料をワッセワッセと作っておりました。
出来上がった資料なんですが、合計65ページ!
スクリーンに投影するので文字は大きめ、また、できるだけ図解を入れましたので、それだけの分量になったわけです。
折角作った資料なので、このブログでも、シリーズ化して紹介していきたいと思います。
ただし、来週の研修が終わってからの公開とさせていただきます。
乞うご期待!
こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
あと3日で令和3年も終わりですね。
東京オリンピックが開催されたのが、遠い昔のように想われます。
昨日は、とある営業の方がアポ無しで来られて、暦占いの本をいただきました。
私は「四緑木星」。来年は、「結実」=◎ということで、事務所経営が上手くいくといいなぁー、なんて思っております。
さて、今回は、今年最後のブログ。
既に、様々な方がネットで記事にしている「インボイス制度」について。
1回限りでなく、今後も何度か記事にしていきたいと思っていて、今回は、インボイス制度が導入された背景などについて書きたいと思います。
インボイス制度。正式名称は、適格請求書等保存方式と言い、令和5年10月からの導入。
この制度が導入されると、これまで発行した請求書に「登録番号」を記載することとなります。
な~んだ、登録番号を記載するだけなんだ!?
いえいえ、「登録番号」を記載した請求書でなければ、消費税の仕入税額控除を受けることができなくなります。
事業を大別すれば、B to BとB to Cがあるわけですが、C=一般消費者は課税事業者になることは無いので、登録番号を発行する必要はないので、小売業の方は、あまり影響を受けないと思います。
一方、B to B=事業者間の取引をメインにされている方は、インボイス制度の影響を全面的に受けることとなります。
なぜこの制度が導入されたか、私的には、
1.取引の透明化
2.益税問題の解消
の2点だと思っています。
現在は、帳簿方式が認められていて、領収書等が無くても、帳簿に所定の内容を記載していれば、仕入税額控除が認められています。
その場合、悪知恵を働かせて、「架空の経費」をでっち上げようと思えば出来るわけです。いわゆる脱税ですね。
インボイスが導入されると、登録番号は、専用サイトで実在するかどうか確認できますので、こういった不正を防ぐことができるようになります。
現在は、売上が1000万円未満であれば免税事業者となり、消費税を申告する必要がありません。
免税事業者であっても消費税を請求しています。支払う側は、相手先が免税事業者かどうかわかりませんから、請求されれば支払っているわけです。
とすると、免税事業者は、受け取った消費税分が利益になるわけで、これが「益税問題」ということで、過去から指摘されてきました。
インボイスが導入されると、取引先は、仕入税額控除を受けるため、免税事業者に対しても、登録番号を記載した請求書を要求してきます。
登録番号の発行は、免税事業者のままだと出来ません。課税事業者になる必要があるのです。
課税事業者になれば、消費税申告をする=消費税を払う必要があり、「益税問題」が解消されるというわけです。
上記「2.益税問題の解消」は、大きな問題をはらんでいます。
免税事業者が、取引先からインボイスの請求書を発行せよと言われたたら、「登録番号」を申請(=課税事業者に自動的になる)しなければなりません。
もし、免税事業者が、その要求に従わなければ、取引先は「それならアンタとの取引は止めることにする」又は「インボイスを発行しないなら、消費税分値引きしろ!」と言われかねません。
免罪事業者にとって、インボイス制度の導入によって「板挟み」状態に追い込まれてしまうかも。
その弊害を予知!?して、経過措置が設けられています。
登録番号を記載していない請求書であっても仕入税額控除を認めるというものです。
・ 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで・・仕入税額相当額の 80%
・ 令和8年10月1日から令和11年9月30日まで・・仕入税額相当額の 50%
うーむ、経過措置だけで、この問題は解消されるのでしょうか。
私は、単に税金だけの問題ではなく、経済取引の問題に発展する可能税を秘めていると危惧しています。
昔は、大工さんなど建築・建設にかかわる職人さん(下請け業者)が多くおられて、確定申告の時期、沢山の方が相談にやってきていました。
そういった方は、インボイス制度が導入されれば、一番打撃を受けることとなり、「もう商売を止めよう」という人も出てくるかもしれません。
少子高齢化で、職人さんが減ってきているというのに・・。
まだまだいろんな問題が内在しているインボイス制度。
シリーズ化して、またお伝えしたいと思います。
それでは、今年最後のブログを読んでいただきありがとうございました。来年もどうかよろしくお願いいたします。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
11月も今日で終わり。
明日からは師走、気忙しくなりますね
さて、今日のお話、一般の納税者の方には、ちょっと複雑な話かも。
でも、私も知らなかったことでしたので、忘備録的に、ブログに記載しておきたいと思います。
以前、ツイッターを見ていたら、ある税理士さんが、
「消費税導入当時、居住用賃貸物件は、課税取引だったが、令和2年度の税制改正で「非課税取引」になった。」
との書き込みがありました。
それを見て、私は違和感・・・。
そもそも居住用賃貸物件は、平成元年消費税が導入されたときから非課税取引だったので、「令和2年度から非課税になった」っていうのは間違いではないかと。
(注釈)「平成元年消費税が導入されたときから非課税取引だった」は、私の思い込みでした。コメントでご指摘いただきました「つはは」さん、ありがとうございました。
正しくは、居住用賃貸物件については、平成3年10月から「非課税取引」に変更されております。
訂正してお詫び申し上げます。
居住用賃貸物件は非課税なので、仕入税額控除ができず、消費税の還付を受けることはできません。
しかし、令和2年度の税制改正以前は、課税売上のある事業を発生させれば、居住用賃貸物件も課税仕入れに算入することができました。
それが、次の規定
↓
「課税売上割合95%以上かつ課税売上高5億円以下の場合は、非課税売上に対する支出を含めて消費税のかかるすべての支出が仕入税額控除の対象になる」
具体例で説明します。
12月末にマンションを取得して、それと同時に、飲料水の自動販売機を置きます。
・ 12月末で、入居者募集中 ⇒ 不動産収入はゼロ
・ 一方、自動販売機の売上は100円以上は発生 ⇒ 事業収入発生
この場合の「課税売上割合」は、
非課税売上がゼロ+課税売上が100円以上 ⇒ 「95%以上」をクリアしてしまいます。
なので、賃貸物件の取得費を含め仕入税額控除の対象となり、結果、消費税の還付を受けることができるようになるわけです!
この方法は、消費税導入後、結構、流行したスキーム(脱法行為⁉)で、様々なホームページでも紹介されていたと記憶しています。
上記のような租税回避スキームに対して、国税庁も指をくわえて黙っていたわけではありません。
平成22年、平成28年と立て続けに改正し、いろんな条件を付けて「還付封じ」をしました。
例えば、
3年目の課税期間において課税売上割合の変動による仕入控除税額の調整の是非を検討する
といった改正が行われました。
しかし、敵もさる者
例えば、3年目に金地金の売買繰り返すことで、課税売上割合を高く維持し3年目の調整を回避するというスキームを考え、それが流行しました。
消費税導入以降30年間、租税回避と課税庁の「いたちごっこ」が延々続いてきたとも言えます。
課税庁としては、いろんな条件を付しても、また違う手で消費税還付をしてくる可能性は否定できないと判断したのだと思います。
令和2年度の税制改正で、
居住用賃貸物件は、原則、仕入れ税額控除の対象にしない
これは究極の選択ですが、過去、様々な条件を付していた税制改正に比べれば、非常にスッキリした、わかりやすい改正だと思います!
マンション1棟買いなど、富裕層相手に不動産業者がセールスをやっていますが、過去においては、セールストークとして、消費税還付スキームを使っていました。
令和2年度の改正で、やっと、消費税還付スキームの「穴を塞ぐ」ことができたのではないかと思っています。
冒頭の税理士によるツイッターの記事ですが、単に、言葉足らずで誤解を招いたのかもしれません。そう信じましょう!