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こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
昨日までカンカン照りで、いよいよ梅雨明けかと思いきや、今日大阪は、昼から雨模様と。
毎日、蒸し暑い日々が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて、納税協会で「電子帳簿等保存法」のセミナー講師をやっていますが、猶予措置として「相当の理由」があれば、電子取引データの保存義務における「検索要件」が免除されるというのは、ご存じでしょうか。
で、今回、「相当な理由」って、具体的にどういうケースなのか、解説したいと思います。
国税庁では、毎年の税制改正で目まぐるしく変わる!?電子帳簿等保存制度の特設サイトが開設されています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
電子取引、電子帳簿・電子書類、スキャナ保存の項目ごとに、制度の解説が行われています。
ただ、この特設ページ、「新着情報」というのが無いんです。
新たな情報が付加されたら、それを新着情報として掲載するのが通常なんですが、それが無い・・。
インボイス制度についても特設ページが開設されていますが、こちらは新着情報がありますが、電子帳簿等保存法については、それが無いって、不親切だと思いませんか⁉
注目していたのは、Q&Aの掲載です。
令和5年度税制改正で、新たな猶予措置が定められ、特に「相当な理由」があれば、検索要件が免除されるわけですが、その「相当な理由」って、具体的には、どういった場合なのか知りたかったわけです。
ありました、ありました。国会で、国民民主党の大塚議員が質問されていました。
質疑の模様はこちらです。
↓
令和5 年3 月16 日財務金融委員会(国民民主党 大塚耕平議員の質疑)
大塚議員:「相当の理由」というのは、例えばどういうことか。
主税局長:「相当の理由」があると認められる場合については、適用要件をことさらに限定する趣旨ではなく、システム対応が整わない場合などを中心に中小企業を含む事業者の実情に応じて柔軟に猶予措置を適用することを想定して規定を明確化したもの。
本年末までの経過措置として講じられている宥恕措置では、例えば、そのシステム対応が間に合わなかった事業者等に対して「やむを得ない事情」があるということで宥恕措置を講じているが、この場合、最終的にはシステム整備する意向がある旨を口頭で回答してもらうといったようなことになっている。
今般の新たな猶予措置は、例えば金銭的な理由などによりシステム対応が今後ともできないといったような理由も該当するということで、柔軟にこの猶予措置を適用することが可能になるよう、こういった規定にしている。
ふむふむ、「金銭的な理由」も相当の理由に当たるわけか・・。
でも、例示ではなく、ちゃんと国税庁で公表して欲しい!
上記の「特設サイト」の「電子取引」のバナーをクリックすると、下の方に「よくある質問」という項目があります。
そこに「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」が掲載されていました。
その一問一答の「問61」に、「相当の理由」の解説がありました!
↓
令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要となります。
ふむふむ、、、
ちょっと待てよ、「システム等や社内のワークフローの整備が間に合わない」って書いてますが、国会質疑にあった「金銭的な理由」は書いていない・・。
「整備が間に合わない」っていうのが、それに該当するのかな。
あまりにも不親切な表現だと思いませんか⁉
もっと具体的に書いて欲しいです・・・。
「特設サイト」には、他にもメニューが用意されていて、「項目別に調べる」という項目に「取扱通達」というのがあります。
↓
そこをクリックすると、ようやく、改正された取扱通達のリンクが出現します!
↓
あぁぁ、やっと見つけました!
まず、取扱通達ですが、
(猶予措置における「相当の理由」の意義)
7-12 規則第4条第3項((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する猶
予措置等))に規定する「相当の理由」とは、事業者の実情に応じて判断するもので
あるが、例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等が
これに該当する。
おい、一問一答と同じ内容やないかい!!
次に、その趣旨説明
【解 説】
規則第4条第3項に規定する「相当の理由」は、当該規定が電子取引の取引情報に係
る電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意して設けられたもので
あることを鑑みて、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存
要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない
等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁
的記録の保存を行うことが困難な事情がある場合を対象とするものであり、資金的な事
情を含めた事業者の経営判断についても考慮がなされることとなる。
ただし、システム等や社内でのワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情
報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できる場合や資金繰りや人手不足等のよ
うな理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく理由である場合等、何ら理由なく保
存要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用はないこと
に留意する。
ようやく国会の質疑にあった「金銭的な理由」=「資金的な事情」が出てきました。ふぅ~。
さらに、「ただし」書きには、「人手不足」という文言も発見!
以上、「相当の理由」には、
・ 金銭的な理由
・ 人手不足
も認められる、というのが結論です!!疲れました(+_+)
今、世の中は労働者不足、それもバックオフィスである経理部署は人員削減されている会社が多いです。
その意味では、金銭的な理由よりも、人手不足の方が「相当の理由」に該当するケースが多いのではないかと思います。
今回は「相当の理由」を深堀りしてみました。
しかし、納税者の方は、基本的に「一問一答」を見ると思うんです。そこには、取扱通達と同じ内容しか掲載されていないというのは、不親切だと思いませんか?
やはり「趣旨説明」の内容まで取り込んだ「一問一答」にすべきだと思います。
現在、セミナーの講師をやっていますが、参加された方は、インボイス制度よりも電子帳簿等保存制度で悩まれている方の方が多いように思います。
もっと、国税庁は、インボイスだけでなく電子帳簿等保存法についても、丁寧かつ親切に説明・PRすべきではないでしょうか?