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こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
ひと頃の暑さから、一気に涼しくなりましたね。
昼間は、まだ気温が高いですが、湿度は低く、朝晩は少し肌寒い日も。
で、9月も残すところあと僅か。
いよいよ10月からは、インボイス制度が始まります!
先日、長年スナックを経営されている方からご相談があり、売上が1千万円もいかないのに、インボイスの登録申請をしてしまった。できれば、取下げをしたいと。
私からは、会社等のお得意様の売上はいくらぐらいになるか聞いてみました。会社関係のお客さんは、接待交際費等で経費とするので、今後、インボイスが必要になりますから。
そのスナックのママさんは、「年間、300万円ぐらいかしら・・。」との回答。
そうであれば、インボイスを登録して消費税を申告するよりも、インボイスを発行するお客さんだけ、値引きをした方が有利ではないかとアドバイスしました。
ということで、今回は、インボイスを登録申請せず、「値引き」により対応する場合についてシミュレーションしてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
もうご存じかと思いますが、経過措置で、インボイスが無くても、導入後3年間は80%、その後の3年間は50%、仕入税額控除ができます。
経過措置で、会社(買い手)が80%までは仕入税額控除が認められるので、残り20%が会社の「損」となります。
そこで、お店(売り手)は、その「損」を値引きとして補填すれば、会社の仕入税額控除+値引き額は、インボイスを受け取った場合の仕入税額控除の金額に近いものとなります。
次の事例で説明してみましょう。
売上(税込み)が11万円の場合
では、2,000円を、そのまま値引きしても良いのでしょうか?
ネットで検索すると、見解が2つに分かれています。
① そのまま値引きの金額とする(2,000円)
⇒ 取引金額 ÷ 1.1 ☓ 10% ☓ 20%
② 2,000円は税抜きなので、税込みの金額とする(2,200円)
⇒ 取引金額 ÷ 1.1 ☓ 10% ☓ 20% ☓ 1.1 = 取引金額 ☓ 20%
①の場合、会社の仕入税額控除+値引額は、
(110,000-2,000) ÷1.1☓10%☓ 80% + 2,000 = 9,854 円
⇒ 本来の仕入税額控除は10,000円ですから、146円、会社が損(お店が得)することになります。
②の場合、会社の仕入税額控除+値引額は、
(110,000-2,200) ÷1.1☓10%☓ 80% + 2,200 = 10,040 円
⇒ 40円、会社が得(お店が損)することとなります。
ということで、会社側を「損」させないためには、②の計算を選択すべきと考えます(お店は若干損することになりますが、値引きの計算が楽だと思います。)。
上記②の計算方法を、図式にしたHPを発見しました!
とても分かりやすいので、紹介しておきます。
https://uchimaki.com/2023/07/04/tourokunasi2nebiki/
上記②の計算例でのお店側の損は40円なんですが、塵も積もれば山となる!?
もっと厳密に計算したい!という方もいるかと思いますので、3次方程式を考えてみました。
いかがでしょうか、まだ誤差はありますが、本来の仕入税額控除の10,000円に近づきました。
ただ、実務的には、②の計算式で良いのかなと思います。
接待等でお店を利用した社員は、通常、会社の経理担当に領収書を添付して精算を行います。
その際、領収書がインボイスに対応していないと、経理担当から「これは経費になりません!」(NHKドラマみたいに)と言われる可能性があります。
そうすると、今後、そのお店を使わなくなることも想定されます。
そのため、お店が領収書を発行する場合、インボイスを発行しない代わりに、会社の消費税負担分を値引したことを明示すれば、お客さん(経理担当)も納得してくれるのではないかと思われます。
今回のシミュレーションでは、取引額を入力すれば、連動して領収書の「但書」に値引額を表示するようにしてみました。
例えば、スナックの利用代金(値引き前)が30,000円、値引額が600円の場合。
冒頭相談に相談に来られたスナックのケースの場合、例えば、
売上が900万円
そのうち、会社のお得意さん(インボイス請求あり)の売上が300万円
のケース
インボイス申請をして消費税課税事業者になった場合と、値引き対応した場合の比較表を作ってみました。(消費税の算出は、簡易課税を適用。値引き額は②の計算で算出)
相談にこられたママさんには、このエクセルで作ったシミュレーションで説明させていただき、登録申請の取下げ書を提出することを決意されました。
この「取下げ書」、書式が決まってないのですね。
WEBに何種類かアップしてますので、それを利用すれば良いと思います。
後日、ママさんからは、「無事、税務署に受理いただけたました。ほんとにありがとうございました」との連絡をいただきました。
このスナックのママさんのように、一旦、登録申請した方で、同様のケースに当てはまる場合は、「取下げ書」の提出を検討されても良いかもしれません。
なお、9月30日までに「取下げ書」を提出しなければ、消費税課税事業者として申告する義務が発生しますのでご注意下さい。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
阪神タイガース、とうとう「アレ」しちゃいましたね!
関西は、「アレ」旋風で、非常に盛り上がっています。
でも、全国的な話題として、他にも「アレ」が2つあると思ってます。
ひとつは、この10月から始まる「インボイス制度」です。
そして、もうひとつは、来年1月から始まる「電子帳簿保存法」。
この2つの「アレ」は、事業者にとっても、税理士にとっても、事務コストが掛かるという点で、相当悩まれているのではないでしょうか。。。
さて、シリーズで掲載してきた「電子帳簿保存法」。
今回は、前回に引き続き、改正電子帳簿保存法の導入により、これからの税務調査がどのように変わっていくかについて、解説したいと思います。
国税庁では、「税務行政の将来像」を令和3年6月に発表しました。
毎年、その内容がリニューアルされ、令和5年6月23日に、最新の内容に更新されています。
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation2023/pdf/syouraizo2023.pdf
表題は「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」となっていて、要は、DXを推進して、税務行政のサービスの向上や業務の効率化を図る内容となっています。
この資料を読むと、オンライン化により、例えば、税務相談のチャット化や年末調整の簡便化、キャッシュレス納付など、納税者利便がこれまで以上に向上する施策が紹介されています。
数ある省庁の中で、ここまで取り組んでいるのは国税庁ぐらいではないでしょうか。素晴らしい!
一方で、業務の効率化については、20ページに「課税・徴収事務の効率化・高度化等
<“データの活用”の徹底>」というのが紹介されています。
この資料の21ページです。
ちょっと文字が小さくて読みにくいかと思いますので、真ん中の図を拡大してみましょう。
「◆BAツール ・ プログラミング言語を用いてデータを分析」と書かれています。
そして、BAツールとは、
BA( Business Analytics )ツール 蓄積された大量データから統計分析・機械学習等の高度な分析手法を用いて、法則性を発見し、将来の予測を行うツール
と解説されています。
一番左の図には、「◆様々なデータを収集し 、 分析用に加工」と書かれています。
そろそろお分かりになった方もいるのではないでしょうか。
そうなんです、前回のブログで解説したとおり、電子帳簿保存法の「ダウンロードの求め」で取得したデータは、
⇒ 申告事績や資料情報などで収集したデータとマッチング
⇒ BAツールを使って分析(異常検知)
⇒ 不正(脱税)の把握
という流れで、今後、調査が行われるようになると思われます。
この資料を読み解くと、今回の電子帳簿保存法の「取引データの保存義務化」は、国税庁のDX戦略に沿って改正されたとも考えられます。
ネット検索すると、様々なBAツールが紹介されています。
で、BAツールの主な機能は、「データマイニング」が挙げられます。
NECのホームペジには、次のように紹介されています。
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◆データマイニングの概要
・データマイニングとは、大量のデータに対して統計学やAIなどを駆使した分析を行い、何らかの知見を得るための活動のことです。「マイニング」は日本語で「採掘」と訳されます。大量のデータを鉱山に見立て、鉱山から知識という鉱物を掘り当てるイメージをするとわかりやすいでしょう。
・近年はIoT技術などの発達により、リアルタイムで大量のデータを分析するケースが増加しています。その際、あわせてデータマイニングが行われることも増えているのです。
・データマイニングの目的は、データ同士の関連性や予想される事象の発生確率を見出すことです。特にマーケティングの分野では、過去のデータから市場動向、顧客の嗜好性などを予測する目的でデータマイニングが活用されています。
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面白い事例を紹介しますと、
① POSシステムというのがあります。スーパーのレジで導入されてますよね。
消費者が購入した商品のデータを集約して、在庫管理だけでなく売上の動向等を分析できるようになっています。
で、POSシステムで得られたデータをBAツールで分析。その結果、「缶ビールと紙おむつが一緒に買われている」のが判ったそうです。
② 車両事故の損害賠償請求について、損害保険会社では、BAツールを使って、不正請求を把握しているそうです。
今話題になっているビッグモータの事件も、BAツールを使えば、バッチリ解明される!?
ということで、国税庁でも、BAツールを使って調査事務の高度化を図ろうとしているわけです。
以上、国税庁のDX戦略と、電子帳簿保存法の改正の密接な関係について解説してみました。
前回のブログでも書きましたが、「ダウンロードの求め」は、BAツールを利用した調査を前提に規程されたものではないかと。で、電子帳簿保存法が改正された「真の目的」はここにあるのではないかと私は思っています。
まだまだ書き足らないことがありますが、今回は、このあたりで筆を置きたいと思います。
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
暑い暑いと思っていたら、いつの間にか9月になりました。
令和5年も3/4を経過。月日が経つのは早いもんですねー(汗)
インボイス制度も、導入まで1か月を切りました。
ご事業をされている方は、インボイスの登録申請はお済でしょうか?
申請から登録まで、書面で最長2か月半、電子申告で1か月程度掛かるようですので、お早めに申請された方が良いと思います。
ただ、令和5年9月30日までに申請すれば(郵送の場合の9月30日の消印があれば)、令和5年10月1日から登録事業者になれます。
登録通知は10月1日以降となりますが、取引先には、通知が来た段階で事後的に連絡すれば大丈夫となっています。
さて、電子帳簿保存法ですが、前回のブログで「ダウンロードの求め」について解説しました。
電子取引データの保存については、猶予措置で「相当の理由」があれば「検索要件」が不要になりましたが、その代わりに、税務署員から「ダウンロードの求め」に応じなければいけません。
今回は、税務署員が、電子データをどのようにダウンロードするのか、またダウンロードしたデータをどのように活用するのかについて、解説したいと思います。
なお、私は、元国税職員なので、退職しても「守秘義務」が課せられているため、あくまで一般論として、現在ある各種ICTツールなどの技術的見地から、今後想定される調査方法を述べることとします。
ネット検索すると、パソコンのHDD内のデータをごっそり複写(クローン複写)するツールが紹介されています。
https://www.pro.logitec.co.jp/about_hdd/hddssd/20201016/
また、警察では、事件解決のため、「デジタルフォレンジック」ツールを使って、消去されたデータの復元や解析を行っています。パソコンだけでなくスマホなどあらゆる電子機器に対応してます。
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/what-we-do/digitalforensics.html
クローンツールは、相当以前から存在していました。
また、デジタルフォレンジックツールについては、警察で使っているということは、税務署でも使っているというのは、容易に想像できます。
ということで、「ダウンロードの求め」に応じれば、調査担当者は、
・ パソコン内のデータをごっそり複写
・ 消去したデータを復元
・ パソコンだけでなく、スマホのデータも分析
・ クラウドを利用している場合は、そこに保存しているデータも分析
といったことが、今後の調査において当たり前のように!?行われる可能性があると思われます。
今後の調査においては、取引先の電子データや会計ソフトのデータをダウンロードされる(=複写されて税務署に持ち帰られる)と想定しましょう。
取引先との決済等の情報は、会計ソフトの仕訳データに反映されています。
会計ソフトの多くは、エクスポート機能があり、CSV形式で保存することができます。
CSV形式であれば、他のソフトにインポートすることができますよね!
なので、ダウンロードした会計データを、エクセルにインポートすることもできます。
インポートすれば、エクセルの機能(検索、ソート、ピポッドテーブル等)を使って、取引(決済、仕訳)の分析が可能となるわけです。
「紙」の帳簿の場合は、エクセルに打ち込んだり付箋を付けたりして分析するしかありません。それも相当事務量が掛かることでしょう。
それが、「ダウンロードの求め」でデータを持ち帰ることができれば、パソコンを使って、縦横斜めから!?分析ができ、調査の効率化が図られることになると思われます。
売上を誤魔化していた納税者に、税務署から調査の事前通知が来たとしましょう。
その納税者は、調査が始まるまでに、誤魔化していたデータは消去しておけば大丈夫と考えていました。
ところが・・・。
昔であれば、それで誤魔化せたかも知れませんが、現在では、上述したツールを使えば消去されたデータが復元可能です。
具体的には、納税者のパソコンのHDDをクーロン複写した後、フォレンジックツールを利用して消去されたデータを復元するわけです。
ただ、一般的な調査では、税務署はそこまでしないでしょうね。
仮装隠蔽が想定される悪質な納税者に対する調査(特別調査や査察調査)では、これらのツールを活用した調査が行われるものと思われます。
記事が長くなってしまいましたので、今回はここまで。
お読みいただいた感想は、いかがでしたでしょうか?
「ダウンロードの求め」に応じれば、上記のような調査が行われる可能性があるわけで、電子帳簿保存法が改正された「真の目的」はここにあるのではないかと私は思っています。
「怖い」と感じられた方もいるのではないでしょうか?
次回は、国税庁が公表している「税務行政の将来像」を参考に、AI(BAツール)を活用した調査手法について解説したいと思います。
乞うご期待!