【お問い合わせ】 E-mail:nog-tax@grupo.jp |
こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
新型コロナも終息の兆しが見えてきた矢先、また新たな変異種「オミクロン」が発見され、飲食店の規制緩和がどうなるのか心配されます。
さて、今回は、企業の交際費課税の歴史を、時代背景に沿って「優しく」掘り起こしてみたいと思います。
企業の営業活動の一環として、取引先を接待することは当然の行為であり、そのために掛かった費用は、企業会計上、必要経費として処理しています。
しかし、税務会計上は、原則として損金が認められておらず、損金算入限度額は国の政策によって、その都度変更されてきました。
この交際費課税は、昭和29年(1954年)に遡ります。
交際費課税は、「資本蓄積で冗費・濫費の抑制」という考えで制度化されたそうです。
ものの本によると、
「その当時の日本は、第二次世界大戦の敗戦により衰弱した経済から、朝鮮戦争による特需景気を迎え、重要産業から基礎産業の設備投資に支えられた内需拡大による好況を続けていたため、交際費等の濫費的な支出が伸びてきた」
「その後、輸入の増加により国際収支は悪化の一途をたどり、それにくわえて特需景気も終わりを告げたことにより、経済基盤の強化と国際収支の健全化が求められるようになっていた」
と書かれています。
正に、当時の経済情勢を背景に、交際費課税制度が生まれたわけですね。
最近の改正事項をまとめてみました。
バブル崩壊やリーマンショックで景気が急降下した日本経済を復興させるため、交際費課税の損金算入限度額は、ずいぶん緩和されてきたのが分かると思います。
ものの本によると、
「企業の交際費は 1992 年度の約6兆円をピークに、バブル崩壊後の経済の低迷、それに伴う企業の営業活動停滞の影響等により、2011 年度には3兆円を切る水準まで低下したが、その後、アベノミクスによる景気回復、それに伴う企業の営業活動の活性化により、2019 年度には約4兆円にまで増加した」
と書かれています。
現在の交際費課税制度は次のとおりです。
令和2年度の税制改正において、超大企業の交際費課税については、制限が厳しくなりました。
その背景は、日経新聞の記事によると、
「もともと企業がため込んだお金を交際費に振り向けて、経済を活性化させるために14年度に創設された。だが企業が接待の飲食代を含めてコスト削減を徹底しており、減税による大きな効果は生じていないと判断した」
なるほど、超大規模法人については、交際費の減少により交際費課税の優遇は効果がないと判断されたわけですね。
今回は、制度の中身というよりも、時代背景をベースに交際費課税の変遷を見てみました。
あまり面白くなかったかもしれませんが、こういった歴史はまとめておいた方が良いと思いまして。
最後に、少しだけ面白いお話を!
「1人当たり5,000円以下の飲食費」は、大企業であっても交際費課税から除外されてます。
そのため、大企業では、当該除外規定を使って損金に落とすケースが多かったようです。
私が国税局調査部にいた頃、1人当たり5,000円を超える飲食店を利用し、その領収書に記載される人数を水増しするという事例が散見されました。
国税局の調査官もバカではありません!
今の時代、ネットで検索すると飲食店の利用金額が出てきますし、写真等から高級店かどうかも判別できるわけです。
会社側が人数水増しを認めない場合は、飲食店への照会や実地反面等によりエビデンスを収集してました。
もし水増しの事実が把握されれば、不正行為として重たいペナルティー(重加算税)が課されます。どうか、ご注意ください!