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★タワマンの節税にメス!

こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。

私は大阪市西区に住んでますが、心斎橋や難波へ歩いて行ける便利なところ。

なので、マンションがいっぱい建っていますし、今も、建設中のマンションも多くあります。

中には、30階以上のマンションも!


ということで、本日の日経新聞の記事にもなっている、タワーマンション(以下「タワマン」)による節税について書いてみたいと思います。



本日の日経新聞


「国税、富裕層に「宝刀」多用 財産価値の再評価9件判明」


富裕層による相続や贈与の税務申告に、国税庁が厳しい姿勢で臨む現状が改めて鮮明になっている。合法な節税策について国税当局が「著しく不適当」とみなして財産価格を再評価した例が過去11年間に9件あった。再評価の根拠規定は「伝家の宝刀」と呼ばれているだけに税務の専門家は「適用件数が予想外に多い」と驚く。

不動産取引の萎縮などにつながらないよう適用基準の明確化を求める声が上がり始めた。



どうしてタワマンは節税になるの?


不動産物件を相続(贈与)した場合、その価格は、時価ではなく、国税庁が定める「財産評価通達」に基づいて行うのが通例で、

・ 土地・・国税庁の発表する路線価

・ 建物・・固定資産税評価額

を基に計算します。

路線価は、国土交通省が発表する公示地価の8割程度に設定されてます。

また、固定資産税の評価額も、実際の建築価格より、だいぶ低く設定されています。


ということで、相続や贈与による納税者の負担が重くなり過ぎないよう、評価額<時価となっていて、その開差が大きいほど節税効果が高いと言えるわけです。


そこに目を付けた富裕層と不動産業者の人たち。

現在、利便性の高い都市部にタワーマンションが建っていますが、上の階に行けば行くほど、販売価格が高くなっています。中には、2億円とか!

それを相続(贈与)の前に購入すれば、相続時の評価額が下がるため、「節税」になるわけです!


2021-12-03 (2)



国税庁も黙ってはいない!


同じタワーマンション・同じ広さでも、1階と30階では大きな価格差があります。なのに、財産評価は同じになるというのは、あまりにも不公平だと思いませんか!?

それが、いわば「節税スキーム」に使われているわけですから、国税庁も指をくわえて黙っているわけにはいきません!


そこで、国税庁は、「伝家の宝刀」を使いました。

伝家の宝刀とは、財産評価通達「総則6項

「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する


要は、財産評価基本通達や条文上は適法であってもその評価が著しく不適当と判断した場合は、、国税庁長官の指示で相続税評価を変えることができる、ということです。


そこで、国税庁は、上記タワマンを使った節税スキームも、この総則6項を適用して再評価を行い、相続税申告を是正するという対策に打って出たわけです。



実際に訴訟となった結果は!?


「親が生前に約14億円で購入した不動産を相続した事例」

財産評価通達に基づいて3億3千万円の評価額で相続税を申告納付したところ、国税庁が「著しく不適当と認められる財産の価額」と指摘して訴訟に発展。

高裁判決では、国税側の主張が認められ、3億3千万円でなく、鑑定評価額の12億7千万円への増額が「適当」とされた。


いかがでしょう?9億もの節税が、訴訟で是正されたわけです。

本税だけでなく、ペナルティー(過少申告加算税)も課され、納税者にとっては大きな損失を招いてしまいました。


今後も、総則6項を適用した事案(調査や訴訟)が増えそうな感じですし、何らかの法的手当てが行われる可能性もありますね。。。



国税経験者からひと言


今回のケースを含め、やはり「やり過ぎ」は目を付けられますね!

税法や通達に従ったといっても、裁判になると「社会通念上、適正か、合理性はあるか」が問われる可能性があります。

富裕層の方は、相続で悩まれている方が多いですが、以前のブログでも書いたように、不動産業者の口車に乗せられないよう気を付けられた方が良いと思います。