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★海外に資産をお持ちの方は、要注意!!

こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。

今日から、臨時国会が始まりました。

この時期は、来年の税制改正について、日々、新聞等で記事になっていて、年末には税制改正大綱が発表されます。


さて、今日は、富裕層に対する課税の厳格化についてお話したいと思います。

昔、といっても10年ぐらい前までは、海外に資産を保有しても、税務署で、それを把握することは困難だったわけで、富裕層を中心に、海外資産を利用した脱税が横行していたと思われます。

そのため、現在は、租税条約等による自動的情報交換が行われ、特に、海外金融資産については、CRS情報が公開されるようになりました。



CRSとは?


CRSとは、情報交換規定に基づいて、自国で非居住の個人や法人等が保有する金融口座情報の報告義務を金融機関に課し、それらを税務当局間で自動的に共有するため国際基準としてOECD加盟国によって定められた「共通報告基準(Common Reporting Standard)」のことを言います。

平成29年8月31日時点で、日本を含む 102 カ国が、平成30年までに自動的情報交換を開始することを表明しており、日本では平成27年度税制改正で制度を策定し、平成29年1月1日から施行されています。



国外財産調書制度の導入


海外資産は、金融資産だけではないので、CRS情報だけでは役不足だと言えます。

CRS制度の導入と話は前後しますが、課税庁は、富裕層の税逃れを把握するため、平成26年(2014年)に「国外財産調書」制度を導入しています。


対象となる国外財産としては、

・ 動産、不動産、借地権等

・ 預貯金、保険金、貸付金

・ 有価証券等(株式、社債等)

・ 仮想通貨

と広範囲になっています。


国外財産調書の提出(対象者等)

・ 12月31日時点で海外資産の合計額が5,000万円を超える国内居住者(非永住者は除く)

・ 翌年の3月15日までに、所轄税務署に提出


提出しなかった場合のペナルティー等

・ 虚偽記載や提出しなかった場合

⇒ 1年以下の懲役または50万円以下の罰金

・ 国外財産調書に記載した財産について所得税の申告漏れがあり、かつ、過去に国外財産調書を期限内に未提出、又は、申告漏れの国外財産の記載がなかった場合

⇒ 申告しなかった国外財産に係る所得税に対して過少申告加算税を5%加重

・ 国外財産調書を正確かつ期限内に提出していた場合

⇒ 所得税の申告漏れがあったとしても過少申告加算税は5%軽減



更に厳格化された国外財産調書

2019年7月、京都在住の会社役員が、知人の日本人男性名義で家具の輸出入販売を行い、2億円超の所得があったにもかかわらず無申告。

更に、脱税した所得のうち約7,300万円を香港の口座に入金していましたが、国外財産調書を未提出だったということで、大阪国税局に告発されたという事件がありました。


この事件を受け、令和威2年度の税制改正で、国外財産調書制度が更に厳格化されました。

・ 過少申告加算税等の加重の対象に、相続税の修正申告等があった場合を追加

・ 税務調査において、資料(取引記録など)を期限までに提出しなかった場合は、過少申告加算税を10%加重


また、令和4年度の税制改正で、更に、

総資産が10億円以上ある場合は、所得が5千万円以下であっても、国外財産調書の提出を義務付ける」ことが検討されるようです。


以上説明したとおり、課税庁は、富裕層の課税強化を進めようとしているのがわかると思います。

もし、制度に該当する方は、余計なペナルティを課されないよう、国外財産調書を正確に記載し、期限内に提出することをオススメいたします。



国税経験者からひと言


富裕層への課税強化については、国外財産調書制度だけでなく、武富士事件を契機に、出国する時に有価証券等の資産を1億円以上保有している者に対して課税する「国外出国時課税制度」も、平成27年に導入されています。

昔、NHK土曜ドラマ「チェイス~国税査察官~」で、パーマネント・トラベラー(海外を転々として税金を払わない人)を取り上げていましたが、現在、グローバル化とともに、まさしくドラマと同じような租税回避が行われ、課税庁も躍起になって、それを封じ込めようとしています。

私も、国税組織にいた頃、海外預金(20億円)を把握したものの、発生が10年以上前のもので、既に時効。歯がゆい思いをしたことがあります。

現在、税務署では、国税財産調書とCRS情報を照合し、提出漏れの海外資産がないかチェックしていると思われますので、ご注意ください!!