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こんにちは。大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。
11月も今日で終わり。
明日からは師走、気忙しくなりますね
さて、今日のお話、一般の納税者の方には、ちょっと複雑な話かも。
でも、私も知らなかったことでしたので、忘備録的に、ブログに記載しておきたいと思います。
以前、ツイッターを見ていたら、ある税理士さんが、
「消費税導入当時、居住用賃貸物件は、課税取引だったが、令和2年度の税制改正で「非課税取引」になった。」
との書き込みがありました。
それを見て、私は違和感・・・。
そもそも居住用賃貸物件は、平成元年消費税が導入されたときから非課税取引だったので、「令和2年度から非課税になった」っていうのは間違いではないかと。
(注釈)「平成元年消費税が導入されたときから非課税取引だった」は、私の思い込みでした。コメントでご指摘いただきました「つはは」さん、ありがとうございました。
正しくは、居住用賃貸物件については、平成3年10月から「非課税取引」に変更されております。
訂正してお詫び申し上げます。
居住用賃貸物件は非課税なので、仕入税額控除ができず、消費税の還付を受けることはできません。
しかし、令和2年度の税制改正以前は、課税売上のある事業を発生させれば、居住用賃貸物件も課税仕入れに算入することができました。
それが、次の規定
↓
「課税売上割合95%以上かつ課税売上高5億円以下の場合は、非課税売上に対する支出を含めて消費税のかかるすべての支出が仕入税額控除の対象になる」
具体例で説明します。
12月末にマンションを取得して、それと同時に、飲料水の自動販売機を置きます。
・ 12月末で、入居者募集中 ⇒ 不動産収入はゼロ
・ 一方、自動販売機の売上は100円以上は発生 ⇒ 事業収入発生
この場合の「課税売上割合」は、
非課税売上がゼロ+課税売上が100円以上 ⇒ 「95%以上」をクリアしてしまいます。
なので、賃貸物件の取得費を含め仕入税額控除の対象となり、結果、消費税の還付を受けることができるようになるわけです!
この方法は、消費税導入後、結構、流行したスキーム(脱法行為⁉)で、様々なホームページでも紹介されていたと記憶しています。
上記のような租税回避スキームに対して、国税庁も指をくわえて黙っていたわけではありません。
平成22年、平成28年と立て続けに改正し、いろんな条件を付けて「還付封じ」をしました。
例えば、
3年目の課税期間において課税売上割合の変動による仕入控除税額の調整の是非を検討する
といった改正が行われました。
しかし、敵もさる者
例えば、3年目に金地金の売買繰り返すことで、課税売上割合を高く維持し3年目の調整を回避するというスキームを考え、それが流行しました。
消費税導入以降30年間、租税回避と課税庁の「いたちごっこ」が延々続いてきたとも言えます。
課税庁としては、いろんな条件を付しても、また違う手で消費税還付をしてくる可能性は否定できないと判断したのだと思います。
令和2年度の税制改正で、
居住用賃貸物件は、原則、仕入れ税額控除の対象にしない
これは究極の選択ですが、過去、様々な条件を付していた税制改正に比べれば、非常にスッキリした、わかりやすい改正だと思います!
マンション1棟買いなど、富裕層相手に不動産業者がセールスをやっていますが、過去においては、セールストークとして、消費税還付スキームを使っていました。
令和2年度の改正で、やっと、消費税還付スキームの「穴を塞ぐ」ことができたのではないかと思っています。
冒頭の税理士によるツイッターの記事ですが、単に、言葉足らずで誤解を招いたのかもしれません。そう信じましょう!