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★インボイス制度⑤ インボイス制度の導入で、「益税」は解消される!?

こんにちは、大阪南船場の「お節介」税理士@野口たかしです。

毎日、暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?


先週は、納税協会主催セミナー「インボイス制度と電子帳簿保存法」の講師を務めました。

このブログで紹介している内容を、2時間コンパクトにまとめて、お話させていただきました。

セミナー終了後、参加された方が、自社の請求書を持参されて、インボイス制度導入後の書式について質問されることもあり、皆さん、インボイス制度の関心が高いなぁーと思った次第です。


さて、前回は、現行「3万円未満の特例」が、インボイス制度が導入されると、極めて限定的になるというお話と、免税事業者にとっては、インボイス制度の導入により、課税事業者になるかどうかの選択を迫られるというお話をさせていただきました。

で、今回は、その続編として、インボイス制度の導入に向けた経済取引の動向を紹介したいと思います。



免税事業者は課税事業者になるか、値引きに応じるか!?


現在は、免税事業者が消費税を受領すること⇒「益税」という問題をはらんでいるわけですが、インボイス制度が導入されると、免税事業者も登録事業者になり消費税を支払うようになることで、益税問題が解消されると言われています。


一方で、登録をしない事業者は,取引先から、

・ 登録事業者になれ!

・ 登録しないのであれば、消費税分値引きせよ!

と言われる可能性があるということです。


特に、値引きを強要されると、小規模事業者にとっては死活問題になりかねません。ご自身は、益税とは認識しておらず、取引先とは、いわば「込み込み」で取引金額を決めていたわけですから。。。


このため、公正取引委員会では、インボイス制度の導入に伴う値下げの強要については、ガイドラインを示して注意喚起していますが、最終的には、B to Bで協議してくださいねといった内容となっていて、拘束力や罰則は無いと思われます。



消費税の大家「金井恵美子」先生も危惧されているようで・・


消費税のセミナーで引っ張りだこの、金井恵美子先生はとても有名な方です。

その先生が、税研217号(2021年5月号)で寄稿されていますので、ご紹介しておきます。


「揺らぐ事業者免税点制度」=抜粋=


・ 親事業者が、下請事業者に対して消費税の転嫁拒否等の行為を行うことは、下請法 上の問題となり得る。公正取引委員会は、消費税転嫁対策特別措置法の失効後においても、消費税の転嫁拒否等の独占禁止法違反行為及び下請法違反行為に対し、厳正に対処することとしている。  

・ すでに適格請求書等保存方式への移行を理由として、課税事業者でなければ取引しない旨の通告、すなわち「事実上の課税選択の強要」の動きが見られる。免税事業者である仕入先に対して、現行の取引額から、その100/110相当額(6年間の経過措置を踏まえた計算による場合もある)への改定を要求することは、消費税の転嫁拒否を疑う危険な行為である。 

仕入先ごとに仕入税額控除の適否を振り分けるという複雑なオペレーションは、容易に受け入れられるものではない。かくして、「事実上の課税選択の強要」となるのであるが、これも独占禁止法あるいは下請法に抵触する可能性があり、慎重に対応する必要がある。  

フランチャイズ事業においては、フランチャイザーが、登録事業者か否かという加盟店のステイタスによってインボイス発行の有無という異なるシステムを提供することは困難であり、同一商品について店舗によって異なる2つの価格を設定することも現実的ではない。したがって、登録事業者となることをフランチャイズ加盟の要件とする方向で検討されるものと考えられる。 

事業者免税点制度は、事務能力に乏しい小規模事業者を救済する制度であるが、適格請求書等保存方式は、彼が免税事業者にとどまることを許さない。この矛盾を解消するためには、どちらかの制度をあきらめるしかないだろう。創設以来30余年を経た今さらのインボイス制度の導入を非難する声がある一方で、免税事業者が取引から排除されるという問題が、功を奏するという見方もある。事業者免税点制度は、税の転嫁のしくみを歪め、益税問題を惹起し、その趣旨に沿わない利用を防止するために複雑化している。適格請求書等保存方式への移行により、小規模事業者の多くが生き残りをかけて課税事業者を選択すれば、事業者免税点制度の形骸化によって、問題が縮小し、ひいては事業者免税点制度の廃止を視野にいれた抜本的な見直しに繋がるかもしれない。 消費税制度の改革の道程には、事業者の数しれない苦悩が存在する。  


※ 太字・赤書は、筆者(私)が脚色



企業は、免税事業者から課税事業者への転換を迫っている?


会計ソフトfreeeのアンケート調査によると、大手企業は、免税事業者に対して課税事業者への転換依頼を行っているようです。


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私が聞いた話ですが、空き地を利用してコインパーキングを経営されている方が、大手コインパーキングの運営会社から、課税事業者になってくれとの依頼があったと。

確かに、コインパーキングの施設は、運営会社が管理してますから、全国至る所にあるコインパーキング。その経営者が課税事業者になってもらわないと、運営会社は仕入れ税額控除ができなくなり、大きな損失となるわけです。




編集後記


う~ん、金井先生も相当悩んでおられる感じがします。

しかし、それ以上に、事業者の苦悩が・・・。


私が危惧するのは、益税の解消よりも、日本の経済構造が変わってしまう可能性。小規模事業者が、経済取引から弾かれる可能性をはらんでいるのではないかと。


皆さんは、どう思われますか?